地元を離れて暮らす私のもとへ、親族や近所の方々からたびたび届いたのは「みかん」。
けれど私はそこまで得意ではなく……。
そこで、みかん好きの友人宅へ送るようになったのですが、ある結婚式で思わぬ形でその「贈り物」が返ってきたのです。
届きすぎるみかん
私の実家は柑橘類の生産が盛んな瀬戸内海の島。
転勤族の夫と結婚して、地元を離れて暮らしていた私のもとには、季節になると親族やご近所からたびたびみかんが届きました。
ありがたい気持ちはありながらも、実はそこまで好きではない私。
社宅暮らしだったのですが、地元が近いせいか旬の季節になるとどこのお宅も家族から「みかん」が届くようで、おすそ分けも難しく。
食べきれず、届いた箱を眺めては途方に暮れることも少なくありませんでした。
みかんの行き先
そんなとき、みかん好きだと知っていた夫の友人を思い出しました。
「せっかくなら喜んで食べてもらいたい」と考え、届くたびにそのご家庭へせっせと送るようにしたのです。
毎年みかんを購入していたという友人はとても喜んでくれました。
送り先が決まったことで、私も気持ちよくおすそ分けできるようになったのです。
思わぬ『ご挨拶ラッシュ』
数年後、夫の転勤で関西に住んでいた頃、その友人の結婚式に出席する機会がありました。
せっかくなので旅行をかねて同行した私。
招待客ではないので、会場外のロビーでのんびりと待機していました。
披露宴が進み、歓談の時間帯になると、新郎のご両親やお姉さん家族が次々と外に出てきて私の方へ向かってきます。
そして「いつも美味しいみかんをありがとうございます」と口々に挨拶してくださったのです。
平服の私に、礼服姿の方々が次々と頭を下げていく『ご挨拶ラッシュ』。
少し恥ずかしさもありましたが、どうやら新郎が「みかんを送ってくれている友人の奥さんがロビーにいる」と伝えていたようでした。
顔が見える喜び
実際に感謝の言葉をかけてもらえたことはとても嬉しい体験でした。
顔が見えると、「また贈ろう」という気持ちが自然と強まります。
贈り物はただ届けるだけでなく、こうして人と人をつなぐ力になるのだと実感した出来事でした。
あの日以来、みかんの箱を見ると少し特別な気持ちになるのです。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。