旅行会社で働いていた頃、11月の行楽シーズンは電話が鳴りやまないほどの忙しさでした。
毎年必ず寄せられるのが「今から宿をとれますか?」という問い合わせ。
そこで私は、思わぬ現実に直面することになり──。
紅葉シーズン到来の慌ただしさ
秋が深まると、旅行会社のオフィスは一気に慌ただしくなります。
木々が色づきはじめると同時に、電話のコール音が絶え間なく響き、スタッフ全員が机に張りつくような日々。
紅葉や温泉などを楽しみに、11月の旅行を計画する人がぐっと増えるからです。
空室があればすぐに情報が共有され、手配に追われます。鳴り続ける受話器を手にするたびに「今年も行楽シーズンが来たな」と感じていました。
相次ぐ「今から宿をとれますか?」
しかし、寄せられる問い合わせの多くは「今から宿をとれますか?」というもの。
有名な観光地やお祭りなどを目的に、思い立って旅に出ようとされる方も少なくありません。
中には「両親に紅葉を見せてあげたい」「久しぶりに仲間と温泉へ行きたい」と切実な思いを語る方もいて、その熱意がこちらにも伝わってきました。
しかし実際には、人気の宿泊施設は10月までにほとんど埋まってしまい、空きを探すのは至難の業なのです。
叶えられない思いに胸が痛む
「どこでもいいから」と頼まれてようやく見つけた宿をご案内しても「ここじゃない」と落胆されることもあります。
希望どおりの条件に沿えないことがもどかしく、申し訳なさを覚える瞬間も少なくありませんでした。
近場ではどうしても手配できず、隣市や隣県まで視野を広げて探すこともしばしば。
それでも決まらず、旅行自体を断念する方もいて、楽しみにされていた気持ちに応えられず胸が痛む場面もありました。
旅は計画から始まっている
この経験から痛感したのは、人気の行楽シーズンほど早めの準備が大切だということ。
11月に旅行を楽しみたいなら、10月までに計画を立てておく必要があります。
思い立ったときに一歩踏み出すことが、素敵な旅の思い出につながるのです。
あの頃のお客さまの姿を思い返すたびに「旅は計画から始まっているのだ」と改めて感じるのです。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。