そんな両親が70歳を迎えたある日、いつもと違う雰囲気で向き合うことになり……
今回は筆者の体験談をお届けします。
普段と様子の違う両親
夏休みに実家に帰省した時の話です。
いつも陽気で明るい両親が、妙にかしこまった顔で、
「ちょっと話しておきたいことがあるの」と切り出して来ました。
え~、実は借金が1億円あるとかやめてよね~。
などと思わず茶化してしまいましたが。
「実はね」
そう言って一冊のノートを見せてくれました。
それは、いわるゆエンディングノートと言われるものでした。
預貯金や保険、大切な契約関係の書類の取り扱いについて等、ノートの形式に従ってびっしりと欄が埋めてあります。
「そろそろこういうのもやっておこうと思ってね」
そう言って母は笑い、父は頷きました。
両親との別れを考える
私はノートを見て、今まで元気でそこにいるのが当たり前だと思っていた両親との別れの時を急に身近に感じ、とても怖い気持ちになりました。
「子どもたちに迷惑かけたくないからさ」
そんなことを言いながら、母は自分のアクセサリーも何点か私にくれました。
「急に何よ~」
内心泣きそうでしたが、お礼を言って受け取りました。
いつまでも元気でいてほしい
両親にはいつまでも元気でいてもらいたいものですが、別れの時はいつか必ずやって来ます。
その時を見据えて、残された家族にできるだけ負担がいかないように、しまい支度を進める。
寂しい気持ち、悲しい気持ち、思いは巡りますが、そんな両親を誇りに思いました。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:田辺詩織
元医療事務、コールセンター勤務の経験を持つ在宅ワーカー。文学部出身で、文章の力で人々を励ましたいという思いからライターの道へ。自身の出産を機に、育児ブログを立ち上げ、その経験を生かして執筆活動を開始。義実家や夫、ママ友との関係、乳幼児期から中学受験まで多岐にわたる子育ての悩みに寄り添い、読者が前向きになれるような記事を届けている。