B子さんの趣味は、「おひとりさま映画」
忙しい毎日も、このご褒美の時間があるから乗り切れるんだとか。
ある日、気になっていた話題作をやっと観に行けることになったB子さん。
ところが、ある「事件」のせいで、せっかくのご褒美時間が台無しに──!?

趣味、「おひとりさま映画」

私の趣味は、おひとりさま映画。
忙しい毎日の中で、自分だけの世界に浸れるこの時間は、なによりのご褒美です。
さて今回は、ずっと観たかった話題作を、先日やっと観に行ったときの出来事をお話しさせてください。

ここのところ仕事で忙しかった私。
「やっと観に行ける〜!」
はりきって、2日前からチケットを予約したので、最後列のど真ん中という私にとって最高の席を押さえることができ、心躍らせながら劇場へ向かったのです。

「ちょっと気まずいかも……」

レイトショーだったせいか、劇場はガラガラ。
話題作ではあるものの、公開から日が経っていたからでしょう。

「もしかして、今日は私ひとりで貸し切り?」
ウキウキしていたのも束の間、予告が始まったころにひとりの男性が、ちょうど私の隣に座ってきました。

広い空間に、なぜか隣同士で二人きり。
ちょ、ちょっと気まずいかも……(笑)

照れ笑いで軽く会釈を交わしましたが、内心では集中を乱されることへの不安もよぎりました。

せっかくの時間が、台無し!

本編が始まると、男性が小声で話しかけてきました。
「今のシーン、すごいですね」
「ここは僕の解釈だと……」

私は、ひとりで集中して観たかったので、対応に困ってしまいました。

ほかに観客はいませんでしたが、初対面で角を立てたくないという思いもあり、「静かに観たい」とすぐには伝えられず、ただ我慢するしかありませんでした。

あぁ、せっかく楽しみにしていた、「おひとりさま映画」の時間が叶わない。
チケット代を惜しみ、エンドロールまで耐え抜きましたが、集中しきれないことがもどかしく感じられました。

リアルは、映画のようにいかない

上映後、「いやー面白かったですね! 今度また一緒にどうですか?」と男性。

意を決して、正直な気持ちを伝えました。
「申し訳ないですが、お断りします。私、本当はひとりで静かに映画を観るのが好きなんです」

男性は相当ショックを受けたようでした。
「えっ、じゃあさっきも迷惑だったんですね……なんか、すみません」

もしこれが映画だったら、この出会いをきっかけに、特別な関係に発展するのかもしれません。
でも――そんなロマンチックなことって、リアルではそうそう起こらないですよね。

やっぱり私にとって「おひとりさま映画」の時間が、いかに誰にも邪魔されない静かな集中を求めている時間だったのかを再確認しました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。