激務が生んだ暴言と、私の「限界」
夫が部署異動で激務になって以来、家庭の空気は張りつめていました。疲れと寝不足で余裕を失った夫は、次第に私にきつい言葉を浴びせるように。深夜、酔って帰宅するたびに「ふざけんじゃねーよ!」と怒鳴り、外のイライラを家族にぶつけるのが常でした。
私も仕事の大変さは理解していました。だから、これまでは「仕方ない」と我慢して聞き流す努力をしてきました。しかしある日、夫の放った「お前が悪いんだろ!」という理不尽な一言が、私の胸に深く突き刺さりました。
怒りの矛先は
何度も飲み込んできた言葉が、ついに限界を超えました。
「黙って聞いていれば、なんなのよ! 私たちが何したって言うのよ!」
と、気付けば私は声を荒げ、夫は「何、言い返してきてるんだよ、うぜーよ!」と逆上。夫婦げんかはヒートアップしました。
そのとき、私の手は、夫が大切にしていたワインの瓶へと伸びました。感情的になってしまった私は、その瓶を台所で割りました。夫がさらに声を荒げたため、二本目も割り……それは、理不尽な暴言に対する、私自身の悔しさと叫びだったように思います。
そして夫は「もう勝手にしろ!」とドアを乱暴に閉めて出て行きました。残された私は、自分のしたことへの驚きと、やり場のない虚しさでいっぱいでした。
夫の思いがけない変化
丸一日後、夫はうつむき加減で帰宅し、開口一番「悪かった」と絞り出しました。昨日の荒々しさとは別人です。
「今日一日、図書館で何冊も本を読んで、俺が悪かったと痛感した。今の俺がこうやって働けるのは、支えてくれているお前がいるからだ。ごめん」
と不器用に話す夫。空白の一日で、自分を見つめ直したその真摯な姿に、私の心の中の氷も溶けていきました。
「やり直す」という決意
激しい衝突は大きな痛みを伴いましたが、夫が自ら反省し、心から謝罪してくれたことが何より嬉しかった。 私もワインを割ってしまったことに謝罪しつつ、彼の真摯な態度に「もう一度向き合おう」と決意。
完璧でなくていい、間違えたら反省し合える関係を目指したい。 今回の衝突は、互いを深く理解し、関係を修復するための確かな再スタートになったと信じています。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。