筆者の知人には隣町に住む10歳の孫がいるのですが、ある日の夜、その孫がたった1人で家までやって来たそう。孫が語った理由に、知人は少し同情を覚えました。

隣町で暮らす孫

私には、10歳の孫のC太がいます。
C太と息子夫婦が暮らす家は隣町にあり、我が家から車で30分ほどの距離。

以前は嫁がC太を連れてよく遊びに来ていましたが、小学校入学と同時に塾も始まり忙しく、我が家に来る回数も減っていました。

夜にインターホンが鳴る

ある平日の夜のこと。夕食を食べ終わった頃に、インターホンが鳴りました。

出てみると、C太が立っていました。

驚いたものの「よく来たね」と声を掛け、一緒にいるはずの嫁や息子の姿を探しますが見当たりません。
「C太、お母さんは?」と私が聞くと、「いない」とC太が答えました。

続けてC太は「1人で来た」と言ったので、私はさらに驚きました。
C太の家から我が家までは車で30分かかります。そんな距離をどうやって1人で来たのか尋ねると、C太は「歩いてきた」と答えました。

「あ、歩いてきた!?」と思わず大きな声が出た私に、C太は黙ってうなずきます。

よく見ると、確かにC太は疲れた様子をしていました。私は慌ててC太を家に上げ、飲み物を飲ませながら詳しく話を聞きました。

C太の家出の理由

C太は、「毎日塾と宿題ばっかりで嫌になっちゃった。お母さんも『勉強しなさい!』ってばかり言うし、それも嫌なんだ」と話しました。

「おばあちゃんの家にも遊びに行かせてくれないし……だから自分で来た」と言うC太。

どうやらC太は、勉強に少し疲れてしまったようでした。
C太の話に私も同情しましたが、嫁が心配しているだろうし、連絡しないわけにはいきません。

嫁に電話をかけると、帰ってこないC太を心配し慌てふためいていました。
こちらにいることを伝えると、嫁は「すぐに迎えに行きます」と言い、我が家にやって来ました。

ですがC太は、嫁に向かって「絶対帰りたくない!」と言い張りました。

困り果てた嫁に、私が先ほどのC太の気持ちを伝えます。嫁は「もうしつこく勉強しろって言わない」とC太に約束。
その言葉を聞いたC太は、ようやく帰って行きました。

その後の嫁とC太

後日息子に話を聞いたところ、嫁は教育にかなり熱心なのだそう。しかし、今回の出来事が響いたのか、今ではあまり口うるさく言わなくなったようです。

C太が我が家に遊びに来ることも増えました。穏やかな表情のC太を見て、私も胸をなで下ろしています。

【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Junko.A
子育てに奮闘しながら、フリーランスのライターとして活躍中。地方移住や結婚、スナックの仕事、そして3人の子育てと、さまざまな経験を通じて得た知見をライティングに活かしている。文章を書くことがもともと好きで、3人目の子どもを出産後に、ライターの仕事をスタート。自身の体験談や家族、ママ友からのエピソードを元に、姑に関するテーマを得意としている。また、フリーランスを目指す方へ向けた情報ブログを運営中。