知人から聞いたお話です。
現在は良い関係を築いている知人とその息子さんですが、思春期のとき息子さんはかなり壮絶な反抗期だったそう。一時は身の危険まで感じたという知人は、ある決意をしたそうです。

思春期の息子が反抗期に

私には2人の子どもがいます。思春期を迎えた長男に反抗期の兆しが見え始めたのは、彼が16歳のときでした。

最初は私の言葉を無視する程度でしたが、その後息子の反抗期はどんどんエスカレート。
壁を殴って穴を開けたことをきっかけに、暴力的な行動が増えていきました。

食器棚の皿を全部床に落として割ったり、私の車を蹴ってへこませたり。日常的に繰り返される息子の目に余る行動に、私自身かなり苦しみました。

そんな中、息子の部屋で見つけたとあるものに、私はさらに追いつめられたのです。

息子直筆の紙

それは、息子の部屋で見つけた殴り書きの紙。その紙には、私への恨みがびっしりと書かれていました。

あまりのショックに、私は紙を手に持ったまま座り込み号泣。
「何がいけなかったのか」「こんなに恨まれるほど、私はひどい母親だったのか」と思いながら、ただ泣き続けました。

辛い状況に冷静さを失ったのでしょう。
「いつか殺されるかもしれない……」
極度の悲しみと恐怖で、私は生きる望みさえ失いかけるほど追いつめられました。

悲しみと絶望の中、私はひとつの“願い”にたどり着きました。
「どうせなら、息子に『いいお母さんだった』という印象を残して最後を迎えたい」

そう考えた私は、翌日からとある行動を開始したのです。

息子のために

私は毎日の夕食に、息子の大好物を作ることにしたのです。

仕事をしていたので、手の込んだ料理を毎晩作るのは大変でした。ですが毎日毎日、ひたすら息子の好きなメニューを並べ続けました。

そんなことをしても、息子に目に見えて変化が起きたわけではありません。相変わらず暴れる日もありましたが、成長に合わせてか次第に落ち着いていきました。

伝わっていた思い

数年後、息子は無事成人しました。
その息子からある日、「俺が荒れてたとき、母さん毎日俺の好物ばっかり作ってくれたよね」と言われました。

「あれ、嬉しかったんだ。毎日俺の好きなものばっかり出てきたから『母さん俺のこと考えてくれてるんだな』って分かったよ」

照れながら言う息子に、私は涙があふれてきました。当時は辛く苦しく、終わりの見えない日々。
それでも、想いが息子に伝わっていた──
息子の言葉を聞いて、すべての苦労が報われたように感じました。

【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Junko.A
子育てに奮闘しながら、フリーランスのライターとして活躍中。地方移住や結婚、スナックの仕事、そして3人の子育てと、さまざまな経験を通じて得た知見をライティングに活かしている。文章を書くことがもともと好きで、3人目の子どもを出産後に、ライターの仕事をスタート。自身の体験談や家族、ママ友からのエピソードを元に、姑に関するテーマを得意としている。また、フリーランスを目指す方へ向けた情報ブログを運営中。