秋といえば、運動会。我が子の運動会は親にとっても気分が高まるイベントです。それゆえに、“運動会の席取り競争”について話題になることも……。
今回は、筆者の友人A子が運動会でほかのママさんとの間で経験した残念なエピソードを紹介します。

娘の晴れ舞台! 「良席」を確保したが……

A子の娘は、幼い頃から運動神経が抜群。小学校で初めて迎える運動会では、早くもリレーの選手に選ばれました。

その活躍をしっかりと目に焼き付けたいと願ったA子は、娘を近くで応援し、きれいに写真が撮れるように、当日の場所取りに奮闘。その甲斐あって、A子夫婦はトラックが見やすい「良席」、前から3列目の好ポジションを確保できました。
その場所の目の前には、朝早くから一人で座っている男性がいました。A子は「お子さんを見守るためにパパさん一人で頑張っているんだな」と微笑ましく思っていたそうです。

リレーが始まったら、ベビーカーを押したママさんが登場

いよいよリレーが始まる頃、A子の緊張感も高まってきます。そうした中で、後ろから「すみません」という女性の声ともに足音が近づいてきました。振り返ると、なんとベビーカーを押したママさんが、狭い通路を通ってこちらに向かってきます。

「こんなところでベビーカーを通すなんて……」
「どこまで前に来るんだろう?」
と思っていると、そのママさんは、周りに謝罪していたものの、A子の前の男性の隣に無理やりスペースを確保し、座り込んだのです。どうやら、このママさんは先に座っていた男性の奥さんだったようです。

そして、ベビーカーはA子の目の前。また、ベビーカーのサイズも大きい。
その大きさはA子さんの視界を完全に遮るものでした。

親としての葛藤

立ち上がっての応援が禁止されていた状況で、「これでは娘の走りが全く見えない、写真も撮れない」と察したA子。リレーに出場する子どもたちの移動中、ベビーカーについて丁寧にママさんに相談を試みました。

しかし、「もうすぐ走り出しちゃうし、移動は難しいです。うちの子の走りを見逃しちゃうかもしれないし」と冷たい返答が返ってきました。実際にはまだ競技は始まっておらず、赤ちゃんを抱いて、ベビーカーを移動させたり畳んだりする余裕はあったはず……。

ここで言い争いになり、せっかくの運動会の雰囲気を壊したくない、と思い、A子はそれ以上は自制しました。

避けて通れない、ママ同士のお付き合い

結局、楽しみにしていた娘さんのリレーは、目の前の大きなベビーカーが目隠しとなり、ほとんど見ることができず、写真も上手く撮れないという心残りの結果となってしまいました。

後日、このベビーカーのママさんとは、娘とは学年が違うものの、同じ時期にPTA役員をすることが判明。今後も顔を合わせる機会が多くあることが分かりました。

さらに、下の子もいるため、学校を通じて長い付き合いになる可能性も否めません。A子は、ママ同士のお付き合いの難しさを痛感しました。子どものためにも、親同士は気遣い、遠慮し合うことが重要であり、相手の状況をよく考える必要があると感じた出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:太田あやこ
大学でジェンダーや女性史を学んだことをきっかけに、専業ライターとして活動中。自身の経験を活かしながら、幅広い情報収集を行い、読者に寄り添うスタイルを貫いている。人生の選択肢を広げるヒントを提供し、日々の悩みに少しでも明るさをもたらせるよう、前向きになれる記事づくりに取り組んでいる。