40年振りの再会
これまで何度も見送ってきた同窓会の案内。今回は思い切って参加することに。
ホテルの会場に足を踏み入れた瞬間、文子さんの胸がざわつきました。
記憶の中で輝いていた友人たちが、深いシワに白髪混じりのマダムに変わっていたのです。
「私もこんな風に見えてるのね……はあ、鏡見れないわ」
鏡を見たくなくなった気持ち、わかりますよね。
40年という歳月の重みをいきなり突きつけられた瞬間でした。
人生の答え合わせ
会場では孫の写真を見せ合い、ブランドバッグや旅行自慢が飛び交います。
離婚歴があり、一人息子も家庭を持たず自由に暮らしている文子さんには、
「人生の答え合わせで、不正解を突きつけられた気分」
そんな重い気持ちになってしまいました。
唯一の収穫は、親友だった芳子さん(仮名)とLINE交換できたこと。
18歳の頃は黒電話で「10分だけよ!」と親に急かされていたのに、
今は時間も料金も気にせずいつでも連絡が取れる便利さです。
親友からの衝撃
数日後、芳子さんからLINEが届き、お茶することになりました。
「よっちゃん、私、同窓会で気後れしちゃった」
文子さんは、変わらない芳子さんに心をゆるして打ち明けました。
昔から情報通で友人の輪が広い芳子さん。
すると驚きの話が……
「ヒロコ(仮名)は社長夫人だったけど倒産して今は未亡人、ハナエ(仮名)は娘3人が全員出戻りなのよ。みんな見栄張ってただけよ」
えっ!?
あの華やかな自慢話の数々が……
そして芳子さんは続けました。
「フミちゃんは60代で自由の身なんて最高じゃない! 私たちLINEグループ作って温泉巡りしようよ。孫の世話も介護もないんだから」
60代の新しい友情
その言葉に文子さんは救われました。
同窓会での劣等感は、みんなの見栄だったなんて。
スマホ一つでつながれる60代の新しい友情。
「18歳に戻った気分で楽しまなきゃ損ね」
今では毎日LINEで旅行計画を立てているそうです。
人生って、見た目だけじゃわからないもの。
みんなそれぞれに悩みを抱えながら、必死に生きてきたのでしょうね。
もっと早く素直に自分の人生を受け入れていれば、と今になって思う文子さん。
でも60代からでも遅くない、新しい友情の始まりになったようです。
【体験者:60代・女性/会社員、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。