これは筆者自身の体験です。私は昔から両親との関係が「悪くはないけれど、特別近くもない」と感じていました。大学進学や結婚を経て、実家との関係は必要最低限。そんな中で、息子からもらった一枚の手紙がきっかけとなり、親に感謝の気持ちを伝える大切さに気づかされた出来事です。

息子からもらった一枚のカードで……

私は昔から、両親との関係は「悪くないけれど、特別近くもない」という距離感でした。父は無口で昔気質、母は几帳面で厳しめ。思春期には「うるさい」「わかってない」と反抗し、顔を合わせてもろくに口を利かない時期もありました。そのまま大学進学で地元を離れ、就職、結婚、出産と、人生が大きく動いていく中でも実家との関係は必要最低限。帰省は年に一度、電話は月に一度。親から来るLINEにも「元気です。忙しいけど頑張ってます」と、どこか他人行儀な返信ばかりでした。

でも、そんな私の心を動かしたのは、ある年の母の日、当時3歳だった息子の一言でした。「ママにおてがみかいたよ!」と、息子が持ってきたのは、不器用な字で「ママだいすき」と書かれた小さなカード。その瞬間、胸が熱くなり、思わず涙がこぼれました。「……私、親にこんなこと、したことあったっけ?」と考えたとき、初めて気づいたのです。

親に感謝の気持ちを伝える大切さ

思い返しても、母の日も父の日も、誕生日も、「今さら感あるし」「照れくさいし」でスルーしてしまっていた自分。そんな中、息子の一言に心が動かされたことが、まるで自分の中で何かを覚醒させたようでした。「ありがとう」って、こんなにも心に響くんだ——そのことに、ようやく気づきました。

その年、私は初めて母の日に手紙を添えて贈り物をしました。「今までちゃんと感謝を伝えてこなかったけど、本当にありがとう」と、数行の短い言葉でした。すると翌日、母から長文のLINEが届きました。「こんな風に言ってもらえる日が来るなんて思わなかった。あなたが子育てをするようになって、いろいろ感じてくれたんだね。一生忘れない。ありがとう」そのメッセージを読んだとき、胸の奥がぎゅっと締めつけられました。母もずっと、私からの「一言」を待っていたのだと、初めて気づきました。

親との距離を縮めた小さな一歩

それ以来、私は毎年、母の日と父の日に短い手紙を添えています。きっかけは息子からもらった小さなカード。でも今では、親との距離をほんの少し近づけてくれる、大切な習慣になりました。親にとって、私の一言がどれほど大きな意味を持つのか、今では心から理解しています。この小さな変化が、私の中で親との関係をより温かなものにしてくれたのです。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。