準備もバッチリで楽しい一日になるはずが、些細なひと言から一転、気まずい空気に──。
その沈黙を破った夫の言葉に、思わず涙があふれた理由とは?
今回は筆者の知人から聞いた、夫婦の心温まるエピソードをご紹介します。
紅葉ドライブデート
その年も、夫婦で紅葉を見に行く日がやってきました。
結婚して3年以上、毎年この時期に行く恒例行事となっているデート。
私はこっそりお揃いのタンブラーとお菓子まで用意して『紅葉狩りをしながらカフェ気分を味わおう』とサプライズにしようと思っていたのですが……。
ケンカ
道中、ナビのルートをめぐって、
「なんで遠回りの道を選ぶの?」
と、夫がボソッとひと言。
些細なことだったのに、運転していた私が責められているように感じてしまい、ついムキになって口調が荒くなってしまいました。
そこから和やかな雰囲気は一変。
渓谷に着いても会話はなく、目の前に広がる美しい紅葉も、なぜか心に入ってきません。
夫「もう帰ろうか」
私「うん、そうだね……」
夫の言葉
無言のまま歩く帰り道。
『このまま気まずいのは嫌だけどどうすれば?』と思っていると、ふと夫が立ち止まってぽつりとこう言いました。
「こうやって2人きりで紅葉を見に来られるのも、あと何年あるかな?」
彼は前を向いたまま、少し照れくさそうにこう続けたのです。
「子どもを授かったら2人きりとはいかないよね」
「健康も仕事だっていつどうなるか分からないしなあ」
「だから今このときをちゃんと楽しもうって思っていたのに、ごめん」
その言葉に胸がいっぱいになり、気づけば涙が頬を伝っていました。
怒っていた気持ちがどこか溶けて、じんわりあたたかい気持ちでいっぱいになっていくのを感じたのです。
仲直り
私が黙ってカバンからタンブラーと大量のお菓子を取り出すと、苦笑いする彼。
「そういうの、ずるいよな~」
「俺もすっごく楽しみにしていたよ」
夫婦で過ごす時間は、一生続くものでも当たり前なものでもありません。
『一瞬の言い争いで悲しい気持ちを引きずるより、“楽しい思い出”を長く大切にしたいな』
そう思った、色づく山道の帰り道でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にFTNでヒアリングと執筆を行う。