子どもの頃、本が大好きだった私は課題図書を選ぶとき、どうしても学年より上の本を読んでみたいと思いました。
でも、大人の一言でその気持ちをつぶされた経験が、今も心に残っています。
ワクワクしながら選んだ本
子どもの頃の私は、とにかく本が好きでした。
課題図書の選書では、自分の学年の本ではなく、背伸びをしてでも上の学年の本を選びたいと強く思ったのです。
字が小さく漢字も多くなりますが、ページ数も多いその本はとても魅力的に見えました。
「きっと面白いに違いない」
そう胸を弾ませながら、申し込み用紙に本の題名を書き込んだときのワクワクは、今でも鮮明に思い出せます。
大人の思い込みという壁
ところが、先生や周囲の大人に「低学年には難しすぎる」と却下されてしまいました。
「まだ早い」と言われた一言は重く、楽しみにしていた気持ちが一気にしぼんでしまったのです。
友だちが当然のように学年相応の本を選ぶ中で、私は「欲張りすぎたのかな」と気恥ずかしくなりました。
胸の奥が重く沈むような気持ちにとらわれ、顔を上げることすらためらうほどでした。
悔しさが残った子ども時代
その後、もう一度挑戦する勇気は出ませんでした。
届いた課題図書はすぐに読み終えてしまい、物足りなさだけが残りました。
しかし、読みたかった本は「自分には分不相応なのだろう」と思い込み、せっかくの意欲も眠らせてしまったのです。
図書館でその本を見かけても、手を伸ばせばまた否定される気がして、結局読まずじまい。
今振り返ると、大人に悪気はなかったはず。
でも、あの瞬間の悔しさはいまだに忘れられません。
大人の役割を考える今
私たちの世代は「みんなと同じ」で安心してきた部分がありました。
けれど、いまの時代は個性を大切にする流れに変わっています。
だからこそ私は、子どもたちに対して「やってみたら?」と背中を押せる大人でありたい。
頑張りたい気持ちを、大人の都合で押し込めないように。
「やりたい」を支え合える環境を大切にしたい。
あの日の経験を胸に刻んでいます。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。