筆者の話です。
台風で船が止まると、町内放送やHPで情報を確認できます。
けれど会社に出てしまうと放送は聞けず、ネットだけでは心もとないもの。
そんなときに届く家族からの電話が、どれほど安心をくれたかを実感した出来事です。

台風と島の暮らし

私の実家は瀬戸内海の小さな島。
船が欠航すると、島外への移動手段はありません。
台風が近づくと船が止まり、町内放送で「本日の便は何時以降欠航です」と第一報が流れます。
なので、台風の日はテレビの音を小さくしつつ天気予報を確認するのが常でした。
私は島外で働くようになり、通勤や仕事の段取りを考えるのが台風の日の大きな課題だったのです。

出社後の不安

朝の段階で欠航が分かれば、すぐに身支度を整えて出社するか、お休みをもらうことを考えることができます。
けれど一度会社に出てしまうと、放送は聞けず、頼れるのはHPだけ。
ところが更新のタイミングは天候任せの不定期で「まだかな」と画面を開いても情報が変わっていないこともありました。

無事に帰れるのか、それとも宿泊先を手配しないといけないのか。
気を揉みながらも仕事中に何度もHPを確認することはためらわれるのです。
情報がわからないまま悶々と過ごす時間が続いていました。

届く電話に救われる

そんなとき、町内放送を聞いた家族や親せきから電話がかかってきます。
「今日の便は止まったよ」「帰れんのじゃない?」と知らせてくれるその一言。
HPに掲載されるより早いこともあり、判断のよりどころになりました。
なかには「今日はホテルに泊まるから大丈夫」と伝えても、それでも律義に電話をくれる人もいます。
そのやり取りに、最初は少し戸惑いながらも、次第にありがたさを感じるようになりました。

人の声にこそ安心がある

ネットで調べればわかることでも、人の声で伝えてもらうと心が落ち着きます。
「今日は大丈夫!」と答えても鳴る電話。
日常生活で緊密すぎる関係性が重く感じられることもありますが、電話越しの「気にかけているよ」という思いが、画面越しの情報以上に心を満たしてくれるのです。

おせっかいがどれほどありがたいことか。
島に根づく温かい関係性を誇らしく感じた出来事であり、何よりも安心させてくれるものでした。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。