人気アーティストのコンサート帰り、臨時バスは大混雑。
熱気に包まれて息苦しい中、ふいに入ってきた風が心を救ってくれました。
バス乗り場は長蛇の列
私には十数年来推しているアイドルグループがあり、年に数回遠征に出かけます。
ドームでのコンサートは何万人規模、規制退場が行われても、会場の外の混雑は相当なものでした。
コンサートが終わり、主要駅までの臨時バス乗り場へ。
そこには、同じように帰路につこうとする人たちの長蛇の列ができていました。
次々に到着するバス。
どれも乗れるだけの人を乗せて出発します。
私もようやくバスに乗り込んだものの、車内はすでにぎゅうぎゅう詰め。
立っているだけで汗がにじみ、窓ガラスはどんどん曇っていきました。
熱気に包まれる車内
バスが動き出しても、空気はこもったまま。
駅直行の臨時バスのため、停車する停留所もなく、ドアも開きません。
人と人が触れ合う距離で息苦しく、せっかくのコンサートの余韻もどこか遠のいていくようでした。体中が熱を帯び、早く駅に着いてほしいと願うばかり。
楽しさで高ぶっていた気持ちが、次第にしぼんでいくのを実感したのです。
一筋の風が流れ込んで
そのとき、窓際に座っていた人が、静かに窓をスッと開けてくれました。
ひんやりとした外気が流れ込み、こもった空気を押し出していくよう。
頬をなでる風に、思わず「助かった」と心の中でつぶやいていました。
重苦しい空気から解放され、新鮮な空気を胸いっぱいに呼吸できる喜びを実感したのです。
ほんの少し窓を開けただけなのに、車内の空気ががらりと変わったように感じました。
優しさの連鎖を信じて
あの日のうれしさは今でも忘れられません。
たったひとつの行動が、こんなにも人を楽にできるのだと知りました。
その気づきが、今の私の習慣につながっています。
それ以来、自分が窓際に座ったときは、少しだけ窓を開けて空気を入れるようにしています。
コンサートの余韻を壊さないように、同じように息苦しさを感じている人が少しでも楽になりますように。
そんな小さな心がけを続けています。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。