突然産気づいたお嫁さん
Mさんは早くに夫を亡くし、女手一つで2人の息子さんを育ててきました。
現在は息子さんたちも独立し、長男は結婚して、お嫁さんと3歳の子どもと一緒にMさんの家の近くに住んでいます。
Mさんは自分が姑との関係に悩んだこともあるため、お嫁さんとはつかず離れずの付き合いをしていました。
そしてお嫁さんが第二子を妊娠し、いよいよ臨月になった頃。Mさんのスマホにお嫁さんから突然電話がかかってきました。
「お義母さん、実はもう産まれそうなんです!」
「えっ!? 大変!」
予定日はまだ先のはずなのに、お嫁さんが産気づいてしまったというのです。
Mさんは慌てて車で長男の家に行き、お嫁さんを乗せて病院へ。そして長男に「もう産まれそうよ」と連絡をしました。
「まだ入院の準備もできてなくて……」
お嫁さんが困ったように言うので、Mさんは代わりに自分が準備して病院に届けることを約束しました。
そして慌てて病院にやってきた長男とバトンタッチし、Mさんは長男の家へ戻りました。
それからMさんは大忙し。
上の子の身の回りの物を集めて自分の家で預かる準備をしたり、お嫁さんの入院の準備や、お嫁さんが欲しがっているという飲み物、アイスクリームなどを買いに行って病院に届けたりと、目の回るような忙しさでした。
赤ちゃんに触らないで!?
そして翌朝。
息子さんから子どもが生まれたと連絡があったので、Mさんは病院に行きました。
「あらー、かわいい!」
二人目の子はかわいい女の子。Mさんが抱っこしてもいいかとお嫁さんと長男に尋ねると、返ってきたのは思いがけない言葉でした。
「先に実母に抱っこしてもらいたいので、お義母さんはまだ触らないでください」
「え…… そうなの、わかったわ」
触らないでという強い言葉にはショックを受けたものの、Mさんにもお嫁さんの気持ちはよくわかったため、そのまま引き下がりました。
そして数時間後にお嫁さんの実母がやってきて、Mさんが抱っこできたのはその後でした。赤ちゃんは本当にかわいかったけれど、Mさんにはモヤモヤした気持ちが残りました。
「あんなに協力したのに、赤ちゃんには触らせてもらえないのね……」
その後お嫁さんから「あの時はありがとうございました」といったお礼の言葉も全くありませんでした。
小さな子どもが2人もいると大変なんだろうな、とは思いつつも、Mさんは次に何か頼まれたとしても、もう協力する気にはならなかったそうです。
大変な時に助けてもらったのですから、「やってもらって当然」という態度はよくないですよね。赤ちゃんのことは気持ちは分かりますが、せめてお礼の言葉くらいは欲しいところです。
【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。