キャンプでの出会い
数年前の秋、私は夫と子ども2人と一緒に、初めてのキャンプに出かけました。
夫婦ともにキャンプ初心者で、右も左もわからず、テントの設営にも悪戦苦闘。
そんな私たちを助けてくれたのは、隣のサイトで小さなテントを張っていた一人の女性でした。
彼女はソロキャンパーで、薪の組み方や火の起こし方など、キャンプのイロハを丁寧に教えてくれたのです。
その優しい笑顔と手際の良さに、私たち家族はすっかり魅了されてしまいました。
星空の下で語り合った夜
夜、私たちはお互いに持ち寄ったコーヒーや軽食を分け合いながら、焚き火を囲みました。
都会での仕事のこと、子育ての悩み、そして「いつか本当にやりたいと思っている仕事に挑戦したい」という私のぼんやりとした夢も、彼女は静かに、しかし真剣なまなざしで聞いてくれました。
別れ際、彼女は「また会えたらいいね」と爽やかに去っていきました。
キャンプの余韻を壊したくない気持ちもあり、連絡先を聞くこともないまま、彼女の後ろ姿を見送ったのですが……。
まさかの再会
数年が経ち、私は転職を考えつつも、なかなか最初の一歩が踏み出せずにいました。
それでも、「とにかく話だけでも聞いてみよう」と、応募を迷っていたその会社の説明会に足を運ぶことにしたのです。
受付で案内してくれた担当者を見て、私は思わず「あっ!」と息を呑みました。
そこに立っていたのは、あの日キャンプで出会った女性!
彼女も私のことを覚えていてくれて、焚き火を囲んで話したことを懐かしそうに笑い合いました。
人生の転機となった言葉
「あの時、仕事でやりたいことを話してくれたよね。あなたにはこの会社が合うと思う」と、彼女は私の背中をそっと押してくれました。
その一言が、転職への迷いを吹き飛ばす決定打となり、私は無事に内定を勝ち取ることができたのです。
そして今、彼女は直属の上司として、私のキャリアを力強く支えてくれています。
あの夜、連絡先を聞かなかったことさえ、この素敵な再会のためだったのかもしれない……そう思うと、人生の不思議な巡り合わせに感謝しかありません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。