「いつまでやってるの、早く順番かわりなさいよ!」
「え……?」
Mさんはあたりを見渡しましたが、Mさんの使っている場所の他にはいくつも空いている化粧台があります。
「この場所を使いたいんですか?」
特に場所にこだわりがなかったMさんは、女性がいつもこの場所を使っているのかと思い、場所をかわろうかと提案しました。
しかし女性の口から出たのは意外な言葉でした。
「違うわよ、それ! うちの子も使いたいって言うからずっと待ってるの!」
女性はMさんが手に持っているヘアアイロンを指さしました。
「ヘアアイロンですか?」
「そうよ、ちゃっちゃと済ませてうちの子に譲って!」
女性の後ろには中学生くらいの女の子が立って、Mさんの手元をじっと見つめています。
「これは私の私物ですけど」
その親子はどうやらMさんのヘアアイロンをスーパー銭湯の備品だと勘違いした様子でした。
「何よ、紛らわしいことしないでよね!」
Mさんはヘアアイロンならフロントで借りられますよ、と言おうとしたものの、その親子連れが憤慨して脱衣所を出て行ってしまったため、伝えられなかったそうです。
人の私物を備品だと勘違いしたうえに、「紛らわしい」なんて捨て台詞まで吐くのはいかがなものでしょうか。Mさんにとってはとんだ災難でしたね。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。