義母が突然のキャンセル
前々から「紅葉狩りに行きたい」と話していた義母のために申し込んだバスツアー。
ところが出発の数日前に義母から連絡が、
「なんだか体調が良くないかも、やめておくわ」
えっ、急に? まさかのドタキャン。
あんなに楽しみにしていたのに。
「お義母さんが行かないなら、私たちだけ楽しむのも悪いですし……やめましょうか?」
義母は少し急ぐように言葉を重ねました。
「いいのよ。あなたたちだけで行ってきて」
がっかりしたサエコさんでしたが、無理はさせられません。
まだツアーがキャンセルOKの期間だったこともあり、ツアー会社に人数変更の件をその日のうちに伝えたのです。
そしていよいよ出発日前日となり、義母に電話をかけると体調はどうやら回復したよう。
一人では退屈だろうと次の日のデイケアを手配し、私達は夫婦ふたりで出発したのです。
夫のちょっと冷たい反応
ツアーの道中、サエコさんが
「お義母さん、どうしたのかしら」とつぶやくと、
夫は不機嫌そうに答えました。
「どうせ、いつもの気まぐれだろ」
そんな夫の言葉に、サエコさんは少しモヤモヤ。
「そんな言い方しないでよ」と心の中で思いながらも、せっかくの紅葉狩りを楽しもうと気持ちを切り替えました。
届いた衝撃の写真
しばらくするとデイケアから、アプリに活動報告が届きました。
「どんな様子かな」と写真を開いたサエコさん。
その瞬間、目を疑いました。
そこには顔は白塗りで、目の周りは真っ黒、いたるところに血のりまでつけた義母が
「ハッピーハロウィン」と満面の笑みを浮かべていたのです。
「え!? なにこれ!」
まるでホラー映画のワンシーン。
バスの中でふたりは思わずズッコケました。
義母の意外な本音
帰宅後、お土産の温泉まんじゅうを渡しながら写真を見せると、義母は照れ笑い。
「やだ、誰これ? あたし?」
さらに、本心を打ち明けてくれました。
「紅葉狩りには行きたかったけど、ハロウィンも一度やってみたくてね」
事前の体調不良というのは言い訳。
実はデイケアで仮装イベントがあり、どうしても挑戦してみたかったそうです。
サエコさんは「心配しちゃって損した〜」と笑い、モヤモヤはすっかり笑い話に。
年齢を重ねても新しい挑戦を楽しむ義母の姿にサエコさんは驚きながらも、「いつまでも元気で人生を楽しんでいてほしい」と心から思ったそうです。
【体験者:50代・女性/パート社員、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。