まさかの言葉に「はい!?」
買い物を終えてコインパーキングに戻った理沙さん。
いつものように車に荷物を入れていると、精算機の前であわてている男性に声をかけられました。
「すみません、ここの番号の方ですよね? 今、間違えてお宅の番号で精算しちゃったんで、こっちの分も払ってくれませんか?」
あまりに当然のように言われた理沙さん。
思わず「はい!?」と声が出てしまいました。
一瞬、何を言われているのか理解できませんでした。
6時間VS50分の衝撃格差
つまり、男性は支払い時に自分の駐車スペースと理沙さんの駐車スペースの番号を間違えて入力してしまい、50分しか利用していない理沙さんの駐車料金を精算してしまって、出庫できずにいるということ。
さらに話を聞いてみると、男性はなんと6時間も駐車していたとのこと。
一方の理沙さんは買い物のための利用で、わずか50分程度。利用時間が桁違いです。
「かわりに6時間分、支払ってくれますよね?」
男性にそのように言われましたが、この状況で男性の駐車料金を全額負担するのは納得がいきませんでした。
確かに誰にだって操作ミスはあり、状況的には気の毒だとも思ったのですが......。
譲る? 突っぱねる?
本来なら「自分で払ってください」で済む話。
刻一刻と迫ってくる、出庫可能時間の終わり。
それでも理沙さんの胸にちらりと浮かんだのは“揉めたくない”という気持ちでした。
怒りと同情のはざまで悩んだ末、理沙さんは思い切って男性にこう伝えました。
「私の利用時間分の50分だけは払います。残りはご自分でお願いします」
男性は「えー、そんな」と心の声が漏れ出して、明らかに不満げな表情。
しかし理沙さんが
「それが筋ですよね」
と言うと、渋々支払いを済ませて去って行きました。
もちろん男性が出庫する前に理沙さんは自分の駐車料金分の現金を用意し、手渡しました。
今思えば……
「なんで私が気を遣ったんだろう?」
理沙さんは後からじわじわと腹が立ったそうです。
最初は少し同情してしまったけれど、冷静に考えれば自分には何の責任もない話。
人の失敗に手を差し伸べること自体は悪くない。でも、優しさと自己犠牲は別物。
あの経験で気づいた線引きは、理沙さんにとって大切な教訓になっているそうです。
【体験者:40代・女性/会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。