慣れない職場で戸惑いながらも、毎日必死に働いていたある日、後輩の“ひと言”が社内の空気を一変させました。
「新人だから……」とあきらめていた私にとっても、大きな気づきを与えてくれた出来事です。
新人はコピー取りが当たり前?
数年前、転職して新しい会社に入社したばかりの頃の話です。配属された部署には、昔ながらの風習が色濃く残っていました。中でも気になったのが、「新人はまずコピー取りから」という暗黙のルール。毎日のようにベテラン上司が分厚い資料をドンと手渡し、「これを50部お願い」と言ってくるのが恒例行事のようになっていたのです。それに加えてお茶くみやトイレ掃除など、任せてもらえるのはどれも雑用とも言える仕事ばかりでした。
雑用? それとも学び?
当時の私は、「この時間をもっと実務の学びに使えたら……」と内心モヤモヤ。周囲も同じように思っていたようで、特に後輩のA君はかなりストレスを感じていた様子でした。でも、誰もその空気を壊すことができず、結局従うしかないのが現実でした。
新人のひと言に、空気が凍った
そんなある日、ついにA君が動きました。資料を手渡された瞬間、彼は落ち着いた口調でこう言ったのです。「この量、紙代も時間も無駄が多いですし、クラウドで共有しませんか?」。その瞬間、部屋の空気がピリッと凍りつきました。ベテラン上司は眉をひそめ、「新人のくせに生意気だ」と一蹴。周囲も「しまった……」という顔で黙り込んでいました。
社長の一声で一転!
ところがその場には偶然、社長が同席していたのです。A君の提案を聞いた社長は、「その通りだな。ペーパーレスの時代だし、コストも削減できる。次回からはそれでいこう」と即決。さらに、「現場からの声が会社を良くする」とも言ってくれました。あまりの展開に、ベテラン上司は無言に。空気が一気に変わった瞬間でした。
小さなひと言が会社を変えた
その日を境に、会議資料はクラウド共有が基本に。コピー機の使用は激減し、作業時間も効率化。後日、A君は「業務改善賞」として表彰されました。陰で苦笑いしていた上司の姿を見て、私も心の中でスカッとしたのを覚えています。
「新人だからこそ見える改善点がある」そんなことを、改めて実感した出来事でした。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。