母は人の好物をよく覚えている人。
好きな銘柄や細かな好みまで忘れない姿に、子ども心に驚かされました。
やがて私自身も自然と同じ習慣を持つようになり、人が喜ぶ顔を見ることが何よりの楽しみになっています。
母は「人の好みを覚えている人」
母は、人の好物を覚えるのがとても得意でした。
近所の人の好きなビールの銘柄から、親類の「お饅頭よりお餅が好き」といった細かい好みまで頭に入っているのです。
そんな母を見て、私は「どうしてそこまで覚えられるんだろう」と不思議に感じていました。
お返しには必ず「その人の好物」を選んでいた
母は、誰かにお返しをするときや恩返しをするとき、必ずその人の好物を選んでいました。
一緒に出かけて、だれかの好物を見つけると「これ〇〇さんが好きだから買って帰ろう!」と言い出すことも。
「これならきっと喜んでくれるよ」そう言いながら買い物をする母の姿に、相手の笑顔を思い浮かべているのが伝わってきました。
私はその買い物に付き合ったり、ときにはお使いに行かされたりしていましたが、その度に「母はこうやって人を大切にしているんだ」と感じていたのです。
気づけば私も同じようにしていた
子どもの頃は正直、「なんでそこまで?」と思う気持ちもありました。
けれど成長するにつれて、母のやり方が自然と自分にも染み込んでいたことに気づきます。
友人にちょっとしたお土産を選ぶとき、職場でお菓子を配るとき。
いつの間にか「その人が好きなもの」を選ぶようになっていきました。
喜んでくれる姿を想像すると自分まで笑顔になるような気がします。
相手が驚いたように喜んでくれる瞬間は、私にとって大きな喜びになったのです。
温かいおもてなしの習慣
今では、人が喜ぶ顔を見ることが私の一番の楽しみになっています。
その習慣を自然に身につけられたのは、母のおかげです。
人の好みを必ず覚えていた母の姿を思い出すたびに、温かい教えに感謝の気持ちがわいてきます。
好きなものを覚えておくのも、おもてなしの一つなのだなと思った出来事。
小さな工夫が、人との距離をふっと近づけてくれる気がします。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。