筆者の知人B子の話。両親の離婚後、母と暮らした日々は、バイト代を取られるなど異常さを含んでいました。一度離れて暮らすも、「社会人になるお祝いがしたい」という母の申し出で、約4年ぶりに再会。その再会時に身分証を悪用され、多額の借金が発覚。私は何度も母に裏切られる中で、強く「自分の力で生きるしかない」と決意しました。

母と暮らした日々の違和感

両親が離婚した後、私は母と一緒に暮らすことになりました。母は恋人を頻繁に変え、家の中の雰囲気は常に落ち着きませんでした。

高校生になってバイトを始めても、稼いだお金はほとんど母に使われてしまう。どこかで、おかしいと感じながらも、その時は「仕方ない」と自分を納得させるしかありませんでした。

一人になって得た安堵

大学進学を機に、私は、母の反対を押し切り、一人で暮らす選択をしました。

初めて自分のバイト代を自分で使えるようになり、生活も心も少しずつ安定していきました。今までは気がつかなかった当たり前のことが、異常だったという事実に気がつき、家に帰ってから気を張らずに過ごせることが、こんなに安心できるのかと驚いたのを覚えています。

22歳の春。再会と裏切り

大学も卒業間近の頃。母から久しぶりに、「社会人になるお祝いをしたい」と連絡がありました。約4年ぶりの再会。ぎこちなさはありましたが、形だけでも節目を祝ってくれるのかと思い、会うことにしました。

しかし食事の席でお手洗いに席を立った隙に、母が私の身分証をスマホで撮影していたようなのです。その時はそれに気づかず……そのまま別れました。

身に覚えのないメールで知った現実

数か月後、私のメールアドレスに届いたのは聞いたこともない金融会社からの督促文。内容は私が“300万円を借りている”というものでした。最初は誤解だと思いましたが、提出されていた身分証のコピーは、なぜか私のもの。頭には母の仕業ではないかという不安が一瞬にしてよぎり、背筋が冷たくなりました。母は違法な金融業者から、私の名義で借金をしていたのです。

信じたくない事実を目の前に、「やはり自分の身は自分で守らなければ」と心の底から実感した瞬間でした。

自分の力で生きていく決意

その出来事で、母への思いよりも「自立しなければ」という気持ちが強まりました。

家族に頼ることができないなら、自分の力で人生を切り開くしかない。今もその覚悟は私の中に残っています。あの経験がなければ得られなかった強さかもしれません。苦い過去ではありますが、「これからの人生は自分次第」――そう信じて歩んでいます。

親族であっても、本人の同意なく借金をする行為は「私文書偽造罪」や「詐欺罪」にあたる犯罪です。また、銀行や消費者金融などの金融機関は、法律(犯罪収益移転防止法)に基づき、契約時に厳格な本人確認を義務付けています。

今回の件のように、身分証明書を不正に利用されたり、勝手に名義を使われたりする被害を防ぐためにも、自分の大切な情報を守ること、そして家族であっても安易な金銭の貸し借りは避けることが重要です。

もし、同様の被害に遭った場合は、一人で悩まず、すぐに弁護士や公的な相談窓口に助けを求めてください。この記事が、皆さんが自分自身の身を守るための、一つのきっかけとなれば幸いです。

【体験者:20代・女性、会社員 回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。