夢を追う彼女のそばにいることが好きだった
彼女は仕事も旅行も全力で楽しむ、行動力あふれる人でした。結婚してからもやりたいことが多く、忙しい日々。
私はそんな彼女を尊敬していて、家事は自然と自分が担うことが多かったことは事実でした。でも、彼女の充実した毎日を支えられるのなら、それでいいと思っていました。
初めての食い違い
そんな生活の中、ある日突然「子どもが欲しい」と彼女が切り出しました。年齢がすべてではないけれど、まだ20代半ば。
私は自分の好きなことをいきいきと楽しむ彼女の姿を日々そばで見ていたこともあり、「やりたいことが少し落ち着いてからでもいいのでは」と答えました。子どもを持つこと自体に反対ではなかったけれど、今は少し早いのではと感じたのです。
母を巻き込むその発言に……
その時、彼女は「あなたのお母さんに子どもを任せればいいじゃない。毎日家にいるし、どうせ暇でしょう? そうすれば私たちは今まで通り自分たちの時間が持てるし、お母さんもしょっちゅう孫と一緒にいられるし、問題ないわよね」と言いました。私の母は確かに近くに住んでいるものの、最初から母を育児の中心に据えるつもりでいる彼女の言葉に、なんだか違和感を覚えた私。
家事を担ってきたことには納得していましたが、「自分の子どもを最初から人任せにするつもりなのか?」という疑問が心の中に浮かんでいました。
話し合いから衝突へ
これまで彼女の意見に大きく反対したことはありませんでした。
でも、この時ばかりは譲れない思いが自分の中に芽生えました。初めて真正面から意見が食い違い、話し合いは衝突へと変化――お互いの考え方は大きくずれてしまい、気づけば夫婦としての関係が音を立てて崩れていったのです。
離婚という選択と今の思い
結果的に、私たちは離婚を選びました。支えるつもりで続けてきた結婚生活も、1つの大きな違いを境に現実とのギャップを埋めることはできませんでした。
今振り返ると、どちらが悪いというよりも、価値観の違いが大きすぎたのだと思います。
夢を応援し、叶え、家庭を築くこと。その両立ができなかった経験は今も胸に残っていますが、お互いに“離れて良かった”と思えることがあるのも本当です。
もし同じような違和感を抱えながら日々を過ごしている人がいたら、「我慢し続けることが正解とは限らない」と伝えたいです。
【体験者:30代・男性、会社員 回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。