悪口
私の母はとても教育熱心な人でした。
父はどちらかというと私の自身のやりたいことをやれば良いというスタンス。
教育方針が徹底的に違う両親は、だんだんとうまくいかなくなりました。
母は性格のきつい人だったため、目の前で夫婦喧嘩をするのは日常茶飯事。
そのうち私に対して父の悪口を言うようになったのです。
「あのクソじじい!」「バカなんじゃないの?」「頭おかしいのよ!」
毎日のように母から聞かされる父の悪口は、徐々に私の負担になっていきました。
違和感
ある日、不思議に思った私が「お母さんはどうしてお父さんと結婚しようと思ったの?」と聞いたところ、母は吐き捨てるようにこう言いました。
「人生最大の失敗ね。自分でも何でかよくわからないわ!」
そんなに嫌なら離婚すればいいのにと思いましたが、なぜか離婚はせず、文句を言いながら一つ屋根の下で生活を続けていました。
私が自分自身に違和感を覚えたのは、20歳を過ぎたころ。
周囲の友人たちは彼氏ができた・好きな人がいるなどと、お酒の席で恋愛話をすることが多かったのですが、私はどうしても結婚や恋愛に興味が持てなかったのです。
その後、友人たちは次々に結婚。
仲の良かった友人で未婚だったのは私とR江の2人だけになってしまいました。
合点
ある時、R江と話していると結婚の話になりました。
私はR江のことを信頼していたので、思い切って両親の話をし、どうしても結婚に夢が持てないと相談してみたのです。
するとR江は冷静に「それって、ある意味虐待なんだよ?」と教えてくれました。
大学で心理学を専攻していたR江。
親が子どもにパートナーの悪口を言ったり、目の前で喧嘩をしたりすることは、精神的な虐待に該当すると言うのです。
「そんな環境だったら、家族っていいなとか、両親みたいな夫婦になりたいとか思えないでしょ?」と言われ、自分の覚えた違和感に合点がいきました。
結論
結局、私は結婚しないまま、今に至っています。
その後、通信制の大学で、児童福祉士を取得するための勉強をすることにしました。
私のように、虐待と気付かないまま苦しんでいる子どもたちを救えるようになりたいと考えています。
【体験者:40代女性・自営業、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子供を養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。