思いもよらなかった早すぎる決断でしたが理由を聞いたとき、誰もが考えを改めることに──。
今回は筆者の知人から聞いた、職場で起こった予想外のエピソードをご紹介します。
突然の退職宣言
これは、新入社員の女性がうちの課に配属されて一週間経ったばかりの出来事です。
まだ顔と名前を覚えている途中だったその日、朝礼後にその子が放った言葉が衝撃的すぎて、今でも鮮明に覚えています。
「今日までありがとうございました」
「すみません、今日で退職させてください」
根性なし?
あまりにも突然すぎる申し出に、私だけでなく職場中がポカンとした状態に。
ミスを責めたり、強く叱ったりしたこともありません。
むしろ、やっと仕事の流れに慣れ始めたばかりのタイミングだったはず。
「こんな早くに辞めるなんて」
「最近の子は根性がないのかも?」
とひそひそ非難するような小声がどこからか聞こえてきました。
でも、彼女の直属の上司がその理由を聞いたところ、想像もしていなかった事情が明らかになったのです……。
衝撃の理由
「母が倒れて、急遽介護が必要になってしまいました」
「父も早くに亡くなっていて頼れる親族もいないのです」
少しずつ涙目になりつつも申し訳なさそうに語るその姿に、皆の表情が変わりました。
思いもよらなかった急な出来事を一人で抱えて、たくさん迷った末の決断だったのだろうと誰もが彼女に同情する空気に。
“親の介護を一人で担う=退職しかない”と彼女もすっかり困っていたようでした。
もちろん、会社としてこのような場合には、退職せずともきちんと利用できる制度があることを説明。
「辞めずに一度休職してはどうか」
と提案すると、制度を知らなかった彼女は涙ぐみながら頷き、制度を活用してもらう形でその場は収まりました。
耳を傾けよう
「辞めたい」
と言われると、すぐに本人のモチベーションや性格に問題があると捉えがちですが、実際にはその裏に深刻な背景があることも多いものです。
あの一件以来“突然の退職希望”の裏側にも、ちゃんと耳を傾けるよう職場の意識が変わりました。
他人の事情は、外からなかなか見えません。
だからこそ、想像力やきちんと相談する姿勢が大事なのだと感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にFTNでヒアリングと執筆を行う。