ある日を境に始まった不調の日々
50代に入り、私はそれまで経験したことのない体の不調に悩まされるようになりました。
急に顔が熱くなるホットフラッシュや、手の震え。
そして何よりも辛かったのは、理由もなく気分が落ち込み、夜中に涙が止まらなくなることでした。
家事も仕事も思うように進まず、できない自分を責めてしまうことも。
「どうしてこんな風になってしまったのだろう」という孤独感に苛まれていました。
夫の理解のなさ
そんな苦しさを夫に訴えても、返ってくるのは「気の持ちようだろ」という素っ気ない一言だけ。
理解してもらえない辛さに、「どうして分かってくれないの……」と、胸が締め付けられる思いでした。
せめて私の苦しみを分かってほしいと願うのに、その思いは届かず、もどかしい日々が続きました。
医師の提案と夫の変化
ある日、思い切って婦人科を受診したところ、薄々感づいてはいましたが「更年期障害」と診断されました。
私が胸に抱えている孤独感や夫への不満を漏らすと、医師は「良かったら、今度ご主人も一緒に来てみませんか?」と提案してくれました。
そして1週間後、渋る夫を半ば無理やり連れて行った診察室で、医師は更年期の仕組みや、ホルモンの変化が体や心に及ぼす影響を、数字や図を使って丁寧に説明してくれたのです。
気持ちの問題ではなく生理現象であること、気分の落ち込みもホルモンの影響で起こることなどを聞き、夫は真剣な表情で耳を傾けていました。
理解してもらえることで救われた
帰り道、夫がぽつりと「知らなくてごめん」と口にしたとき、私の胸はじんわりと温かくなりました。
その日以来、夫は以前より積極的に家事を手伝ってくれるようになり、私の体調を気遣う言葉も増えました。
私が汗をかいて辛そうにしていると「休んでいいよ」と声をかけてくれ、夜に気分が沈んだときも、そっと隣に寄り添ってくれるのです。
一度一緒に婦人科へ行ってくれただけで、夫がここまで変わるとは思ってもみませんでした。
理解してもらえることが、こんなにも心を軽くし、支えになるのだと、改めて実感した出来事でした。
【体験者:50代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。