これは筆者自身の体験です。
毎朝の習慣として夫にお弁当を作っていた私。しかし「もうお弁当はいらない」と告げられ、深く落ち込みました。ところが理由を聞くと、それは私を思いやる気持ちから出た言葉だとわかり、夫婦の認識の違いと本当の思いやりに気づかされた出来事です。

「もうお弁当はいらない」の一言にショック

毎朝、私は夫のためにお弁当を作っていました。節約になるし栄養バランスも整えられる。夫も受け取るたびに「ありがとう」と言ってくれるので、不満を抱くこともなく続けていたのです。ところがある日、夫から思いもよらぬ一言を告げられました。
「もうお弁当は作らなくていいよ。おにぎりでいいから」
その瞬間、胸の奥がズキンと痛みました。「もしかして、私のお弁当が恥ずかしかったの?」そんな不安が頭をよぎり、しばらく落ち込んでしまったのです。

本音を聞いてみると意外な理由が

落ち込んだままではいけないと思い、意を決して夫に理由を尋ねました。すると返ってきた答えは予想外のものでした。
「お弁当が恥ずかしいなんて思ってないよ。ただ、食べる時間がなくて残してしまうのが申し訳ないんだ。おにぎりなら片手でさっと食べられて無駄にならないから」
夫にとっては“拒否”ではなく“気遣い”だったのです。その言葉を聞いた途端、心を覆っていたモヤモヤはスッと消え去りました。

認識のズレに気づいた瞬間

私は「節約のためにお弁当を作っている」と思い込んでいましたが、夫にとっては「妻が自分のために手間をかけてくれる特別な存在」でした。だからこそ残してしまうことが心苦しかったのです。お互いに“お弁当”という同じものを見ながら、実は認識が違っていたことに気づかされました。ほんの少し言葉を交わすだけで、見え方がこんなにも変わるのだと実感した瞬間でした。

新しいスタイルで心地よい日常へ

その後、我が家では“おにぎり中心+軽いおかず”というスタイルに切り替えました。夫は時間を気にせず食べられるようになり、私は「無駄にならない」という安心感を得られる。結果として、以前より合理的で気持ちのよい日常に落ち着いたのです。

思いやりは時にすれ違う

夫の一言に一瞬傷ついたけれど、話してみて初めて「本当の思いやり」に気づけました。夫婦のすれ違いは、実は相手を想う気持ちの裏返しなのかもしれません。お互いの立場や状況を丁寧に確かめ合うことで、関係はもっと穏やかであたたかいものになる――そう学んだ出来事でした。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ITNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。