あの子ばっかり、なんで……
私は、入社してからずっと同期のB子に劣等感を抱いていました。明るくて、誰とでもすぐに打ち解ける。上司ウケも良くて、仕事も早い。私はというと、真面目にやっても空回りばかりで、なかなか評価されませんでした。
「なんでB子ばっかり目立つの?」「私の努力は見られてないの?」
そんな思いが募るたびに、心の中でB子を嫌いになっていきました。
笑顔で話しかけてくる彼女に、私は表面上は愛想よく返しながら、どこか冷たい視線を向けていました。
ある日、上司がB子をチームリーダーに任命しました。心の中で、何かが弾けました。
私だって頑張ってるのに
「……私だって頑張ってるのに」
その夜、残業中に涙が止まらなくなって、ひとり会議室で泣いていると、先輩のCさんがドアをノックして入ってきました。
「大丈夫? 無理しなくていいよ」
私は思わず、「なんでB子ばかり評価されるんですか」と、本音を漏らしてしまいました。
先輩がくれた“気づき”
Cさんは少し黙ったあと、静かに言いました。
「B子ちゃんが輝いてるのは、A子ちゃんが頑張ってるのを誰より見てるからかもしれないよ。あなたは誰かの上に立つより、誰かの支えになる力を持ってる。周りはちゃんと見てるよ。私も、ね」
その言葉を聞いた瞬間、心の奥がじんわりとあたたかくなりました。
自分では気づかなかったけれど、私にも私なりの価値があるのかもしれない。そう思えたことで、ずっと張り詰めていた何かがふっと緩んでいきました。
嫉妬の奥にあったもの
それから私は、B子に素直に話しかけることができるようになりました。張り合うことではなく、認め合うことのほうが、よっぽど気持ちいいと知ったからです。
人と比べてばかりだった自分。でも、少し視点を変えるだけで、世界は優しくなるんだと気づかされました。
今ではB子とも先輩のCさんとも、良いチームで仕事ができています。
あの日、先輩がそっと差し伸べてくれた“言葉”が、今の私の背中を支えてくれています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。