見た目や服装のスタイルは、その人の個性を表す大切な一面です。けれど、時にはつい偏見を抱いてしまうこともありますよね。今回は筆者の知人が、そんな偏見を恥じることになったというエピソードを聞かせてくれました。

息子の結婚相手はギャル?!

息子が結婚相手として連れてきたC美さんを見た瞬間、私は内心驚いてしまいました。
金髪にネイル、華やかな装いはいわゆる「ギャル風」。

結婚後もC美さんは自分のスタイルを貫き、個性的なスタイルは変わらず。
両親を早くに亡くした彼女を、地味で優しい息子が気の毒に思っているだけなのでは……と、失礼な考えをしてしまった時期もありました。

でも、明るく社交的で礼儀正しい彼女に、息子が惹かれた理由も分かる気がしたのです。
また、いつも自然体で、息子を支えながら笑顔で接してくれる姿も印象的でした。

突然の不幸

息子とC美さんが結婚して半年ほどたったころ、私たち家族に突然の不幸が降りかかりました。
夫が病気で急逝してしまったのです。

あまりにも突然のことに、私も息子も現実を受け入れることができず、ただただ動転し、悲しみにくれていました。

さらに、そんな私と息子に追い討ちをかけるように親戚たちが集まり、好き勝手に騒ぎ始めました。「葬儀はどうする」
「遺産はどう分ける」
「所有していた不動産はどうする」

混乱に乗じて自分たちの意見ばかり主張する声に、私たちの心はさらに疲弊……。

その時です。

「皆様、お静かにお願いいたします」

C美さんの凛とした声が響き渡り、親戚たちを制止してくれたのです。

見た目の奥にあるもの

それからC美さんは、葬儀社との打ち合わせから香典の管理、返礼品の手配まで、全てを滞りなく仕切ってくれました。

気難しいことで有名な伯父さえも「あの子は大したもんだ」と舌を巻くほどの見事な立ち居振る舞いに、私はただただ圧倒されるばかりでした。

後で息子に聞いた話ですが、C美さんの実家は代々続く由緒ある老舗旅館で、彼女自身も幼い頃から厳しく礼儀作法を叩き込まれていたそう。

しかし、両親の他界と経営難により旅館は閉業。
それまで真面目に生きてきた彼女は、やっと肩の荷を下ろし、その反動もあって、憧れていたギャル風のファッションを楽しむようになったのだとか。

つまらない偏見を捨てて

その話を聞いた時、私は自分の偏見を心の底から恥じました。
見た目だけで彼女を判断し、ずっと心の中で見下していた自分が、あまりにも小さく、情けなく思えたのです。

ギャルが悪いわけではありませんし、ギャル風のスタイルも、彼女の魅力的な個性の一部。
それに気付けたことは、私にとって大きな学びになり、本当に良かったと思います。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。