ワンオペ看病で限界に
先日、3歳の娘が39度の高熱を出したときのことです。
運悪く夫が繁忙期だったため、昼夜問わずワンオペで看病していた私は、心身ともに疲れ切っていました。
ぐったりと苦しそうな娘を見ているだけで胸が張り裂けそうで、ただただ、娘の回復を願うばかり。
せめて水分だけでも取らせたい、何か口にできるものを……と思い、仕事中の夫に「帰りにゼリーを買ってきて」とLINEを送ったのです。
夫が持ち帰った「謎の箱」
1時間後。帰宅した夫が手にしていたのは、ドラッグストアやコンビニのビニール袋ではなく、デパ地下で見るような上品な紙袋でした。
中から出てきたのは、金色のリボンがかかったキラキラした箱。
開けてみると、そこには宝石のように輝くワインゼリーや、大粒のフルーツがゴロゴロ入った高級ゼリーが並んでいました。
熱で苦しむ3歳児が、こんな高級ゼリーを食べられるはずがありません。
致命的なミスに夫は
「これ、何?! こんなの食べられないでしょ!」声を荒げる私に、夫はきょとんとしながら言いました。
「え? これは君のだよ。看病に疲れて、甘い物を食べたいのかと……」
私の鬼のような形相を見て、夫はハッと我に返ったようでした。
「あ! 娘ちゃんのゼリーか!」
自分の勘違いにようやく気づいた夫は、顔面蒼白になり、「ごめん、すぐ買ってくる!」と叫んで、嵐のように玄関を飛び出ていきました。
夫の心に染みる優しさ
数分後、息を切らして帰ってきた夫が差し出したコンビニのゼリーを、娘は美味しそうに食べてくれました。
その姿に安堵しながら、夫の思いがけぬ勘違いにクスッと笑いが出てしまった私。
娘の発熱で心配と不安でいっぱいだった心に、余裕がやっと戻ってきたのです。
高級ゼリーを見た瞬間は思わず激怒してしまいましたが、私のことを考えてくれたその気持ちが、乾いた心にじんわりと染みたのも事実。
「さっきはきつい言い方をしてごめんね」
私は夫に謝り、ありがたくデパ地下のゼリーをいただいたのでした。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。