筆者が訪問介護事業所に勤務していた時のお話です。人手不足に悩んでいた私たちの事務所に、A子という人が応募してきました。求人に詳細条件をしっかりと掲載していたにもかかわらず、このA子は自分勝手とも思える条件を提示してきたのです。

人手不足

私が勤務していた訪問介護事業所は、人手不足に悩んでいました。
詳細条件を提示して求人を出していたのですが、ある時、求人を出してすぐにA子という人が応募してきました。

書類を見ると、求人票通りの勤務が可能ということが明確に記載されており、志望動機も「介護の仕事で社会の役に立ちたい」など、しっかりとした印象。ぜひ話をしたいと面接の連絡をすると、ちょっと食いつき気味なくらい「お願いします!」と言ったA子。
やる気のある若い人材が来てくれるかもという期待が高まりました。

求人の条件

訪問介護はただ仕事をこなせば良いだけではなく、利用者さんやご家族との人間関係や、介護技術の研修など、さまざまな準備が必要な仕事です。
そのため、入社から3ヶ月間は試用期間として研修を受けてもらうことになっていました。

求人票に記載してある応募条件は、正社員なら9時~17時で週休2日。
パートなら週3日以上で1日5時間以上が条件です。

本当の希望は......。

面接日当日になり、A子がやってきました。
挨拶を終え、簡単な自己紹介をお願いすると、A子は開口一番こう言いました。

「働けるのは週1日なので。時間は、朝9時から11時まででお願いします」
「それ以上は無理なんで、よろしくお願いします」

そうきっぱりと言い切るA子。
事前にいただいている書類では“週3日以上、5時間以上の勤務が可能”と書いてありましたが、面接までの間に希望条件が変わってしまったのかなと思い、私は業務内容の説明を交えつつ、なぜ応募条件の時間が必要なのかと話をすることにしたのです。
「その条件では研修時間も限られてしまうし、そうすると訪問できる利用者さんも限られてしまう」と言った形でA子に説明をしたのですが......。

「いいんです。正直なところ、とりあえず“なるはや”で就職して、就労証明が欲しいだけなんで」

今まで抱いていたA子の印象とは全く違う彼女の態度に、私は唖然とするしかありませんでした。

A子の本音

A子は続けて「でも、介護業界で頑張ってるって聞こえがいいじゃないですか。働きながら資格も取れるなら楽ですよね?」と言います。
私が「確かに働きながら資格は取れるけど、きちんと研修機関に通学する必要もあります」と言うと、A子は「え~、なんか色々めんどくさいですね」とあからさまに嫌な顔をしました。

教訓

自分に有利な条件を最後まで突き通そうとしたA子。
上司にも一部始終を報告し、結局不採用となってしまいました。

それからは、面接の連絡をする時点で、希望する条件をしっかりと確認することを徹底。
採用者は、本当に仕事を頑張りたいという人を見極める力がなければいけないんだと肝に銘じました。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子供を養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。