子どものことを心配するあまり、つい口を出したくなることってありますよね。しかし、良かれと思って行動したことが、結果的にはお節介になってしまうこともあるようです。今回は筆者の知人のエピソードをご紹介します。

息子夫婦の“お金事情”

先日息子がめでたく結婚しました。
お相手は息子と同い年のA子さんで、優しくて誠実そうな女性でした。

だからこそ、結婚してから数か月後、息子から「毎月、給料から20万円をA子に渡してるんだ。それでもまだ足りないらしくて」と苦笑いで聞かされた時、私は耳を疑いました。

息子は大手の飲食会社に勤めているとはいえ、まだ若く、給料もそれほど多くはありません。
住んでいる場所は社宅で、家賃は破格の安さです。

それなのに、月20万という大金がどこに消えているのか。
夫婦2人でそこまでお金がかかるとは思えないのに、なぜ20万も……。

つのっていく不安

まさか、A子さんの実家へ過剰な仕送りでもしている?
それとも借金でも……?

頭の中には憶測ばかりが広がり、心配が抑えきれなくなっていきました。

お節介だと分かってはいましたが、悩んだ末に私は息子がいない日にA子さんと会い、思い切って事情を尋ねてみることにしたのです。

通帳が語る真実

約束の日、息子夫婦の家を訪ねた私が「口出しして悪いんだけど……」と前置きをして、月20万の件を聞くと、A子さんは一瞬驚いたものの、すぐに奥の部屋から通帳を持ってきて見せてくれました。

その通帳は息子名義で、毎月きっちりと20万円ずつ貯金され、引き出された形跡はありません。

呆然とする私に、A子さんは照れ笑いを浮かべながらこう言いました。

「彼、いつか自分のお店を持ちたい夢があって。でも『自分では貯金できないから』と言うので、私が預かっているんです。生活費は残りの彼のお給料と、私のパート代でまかなっているので大丈夫ですよ」

私は自分の愚かさに、顔から火が出る思いでした。

心からの謝罪

月20万円は、全て息子の将来の夢のために貯金されていたのです。

同時に、言葉足らずで誤解をまねく言い方をした上、金銭管理も苦手な息子に、恥ずかしさを感じました。

「情けない息子で本当にごめんなさい。私も、失礼な誤解でお節介なことをしてしまって……」と心から謝罪すると、A子さんは優しい笑顔で許してくれました。

この出来事をきっかけに、私はもう2度と息子夫婦のことに口出しはしないと、心に誓ったのでした。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。