やたらと「配りたがる」夫
夫は、なぜかやたらと人に物を配りたがります。
お中元やお歳暮のような季節のご挨拶だけではありません。
道の駅で大量の泥付き野菜を買い込んだり、わざわざ取り寄せた果物を箱ごと抱えて出かけたり。
ときには自分で手打ちそばまで作り、それを親戚や近所に配り歩くのです。
夫が必ず漏らす不満
「配るだけならまだいい」と思います。問題は、その後に夫が必ず口にする言葉。
「Aさんのところは、野菜を渡してから1か月も経つのに、何のお返しもない」
「Bさんは、いつもならお礼の電話があるのに、どうしたんだ」
自分から配っておきながら、見返りがないと不満をこぼすのです。
私は「そんなに言うなら、買ってまで配らなければいいじゃない」と伝えますが、夫の耳には届きません。
“配り魔”になった夫の意外な理由
ある日、どうしてそこまでして配りたがるのかと、私は夫に尋ねてみました。
返ってきた答えは、「君は兄妹が近くにいるからわからないんだ」と。
私は5人兄妹で、皆近所に住んでいます。
食べきれない頂き物を持ち寄ったり、畑で採れすぎた野菜を分け合ったり。当たり前のようにお裾分けが飛び交います。
それは、義理や損得ではない、自然なやり取り。
一方の夫は一人っ子で、親戚も近所に知り合いがいません。
子どものころからそうした交流に縁がなく、大人になった今もそれを寂しく感じていたと言うのです。
繋がりを求める心と、見返りへの執着
だからこそ夫は、わざわざ買った品を配ってまで、人との繋がりを作ろうとしていたのです。
けれど、やはりそれは「自然に生まれる関係」とは違います。
無理やり作った関係だからこそ、相手の反応やお返しに過敏になり、夫自身を苦しめてしまっていると感じました。
「誰かに喜んでもらいたい」という気持ちは素晴らしいけれど、その裏に「見返りを期待する心」が潜んでいるうちは、本当の意味で満たされることはないのです。
私は夫に、“気楽で自然なお裾分け”の空気を少しずつ学んでほしいと願っています。
【体験者:60代・女性パート、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。