忙しい毎日を乗り切るために、趣味って大切ですよね。好きなことに没頭する時間は、乾いた心に潤いを与えてくれる、まさに「心の支え」です。でも、それを身近な人に理解してもらえなかったら……。今回は、筆者の友人のエピソードをご紹介します。

「そんなことして、何になるの?」

30代半ばをすぎても、私はあるアイドルグループに夢中でした。
CDを何枚も買い、ライブがあれば全国どこへでも飛んでいく。そんな私を、母は冷ややかな目で見ていました。

「いい年して結婚もせずみっともない」
「そんなこと、1円のお金にもならないでしょ」が母の口癖。

その言葉を聞くたびに胸がチクッと痛みました。
母にとっては理解できない浪費でも、私にとっては日々を走るためのエネルギーだったのです。

心が折れたある日

「推し活があるから、辛い仕事も頑張れる」
私はずっと、そう自分に言い聞かせていました。

ですが、その頃から急激に職場の人間関係が悪化して、大きなストレスを抱えるように。

そしてある朝、ついに心と体を繋ぎとめていた糸が、プツンと切れてしまったのです。

推しと仲間に救われて

会社に行けなくなり、部屋に引きこもる日々。
やり場のない気持ちに押しつぶされそうになっていた時、枕元に放っていたスマホが震えました。

通知画面には、「大丈夫?」「いつでも話聞くよ」「次のライブ、一緒に行こうね」
……そんなあたたかいメッセージが。

それは、推し活を通じて知り合った全国の友人たちからでした。
言葉の1つ1つが、まるで暗闇に差し込む光のように思えたことを今でも覚えています。

「好き」の力が、新しい未来をくれた

母が言う「お金にならない趣味」と、それがきっかけで繋がることができた友人たちとの関係が、私にとっては命綱になりました。

推し活をしていなければ、あの暗闇から這い上がれなかったと思います。

その後、友人たちに背中を押され、私は転職を決意。
今では、以前のように人間関係に悩まされることがないオープンな会社で、自分らしく働くことができています。

社会的な評価や貯金額よりも、心が震えるほどの「好き」という熱量こそが、人生を豊かにする力になる。
そう胸を張って言えるようになった今なら、あの日の自分に「そのままで大丈夫だよ」と伝えられる気がします。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。