高級品ばかりをお下がりとして受け取るたび、ありがたい気持ちと同時に重さも増していったそうです。身近に起こりそうな出来事に、思わず耳を傾けてしまいました。
ありがたいはずのお下がりが、正直つらい
私の義姉はとても裕福で、身に着けるものや持ち物はすべて高級ブランドです。そんな義姉から、定期的にお下がりが送られてきます。
最初は「良いものを譲ってもらえるなんて助かる」と思いました。ところが実際は、届くたびに段ボールいっぱいの量。
片づけるのに追われるうえ、子どもたちの趣味とも合わないので使わないものばかりなのです。ありがたい気持ちがある一方で、「また増えてしまった……」という重苦しさにため息がこぼれました。
角を立てないために続けた努力
それでも「せっかくの好意を無下にはできない」と思い、いただいた後には必ずお返しを用意しました。旅行のたびにお土産を選び、季節の贈り物を欠かさず届けるようにしてきたのです。
本当は少し負担を感じながらも、家族だからこそ角を立てたくない。義姉との関係を壊さないために、笑顔を作り続けてきました。でも、心の奥では「いつまで続ければいいのだろう」という小さな疲れが積み重なっていったのです。
喜べない贈り物に芽生えた違和感
そんな気持ちが限界に近づいたのは、家を建てた時でした。お祝いとして届いたのは、義姉の子どものお下がりの服。
最初は目を疑いました。新しい生活のスタートに、なぜ「お下がり」なのだろう。ありがたいと思いたくても、どうしても喜べませんでした。そこには「お祝いしたい」という純粋な気持ちが感じられなかったのです。
その瞬間、ありがたさと違和感が入り混じった感情が、胸の中で大きく揺れ動きました。
優越感をにじませたひと言で決めたこと
とどめになったのは、親戚の集まりで義姉が放ったひと言でした。
「あなたには新品なんて買えないでしょ? よかったわね、私が姉で」
その瞬間、胸の奥がスッと冷えたのを覚えています。そこにあったのは思いやりではなく、明らかな優越感でした。私がこれまで抱えてきたもやもやが、一気に形を持ったのです。
その日を境に、私は決めました。もう「ありがたい」と自分に言い聞かせて感謝に縛られるのはやめよう、と。
表面上は穏やかに振る舞いながらも、心の中では境界線を引きました。
義姉と関わる時は、感謝と同時に自分を守る距離感を持つ。それがこれから先、心をすり減らさずに付き合っていくために必要なのだと悟ったのです。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。