短気な父に気を遣う家族
私の父は、ちょっとしたことでイライラし、すぐに怒鳴るタイプでした。
理由は本当にささいなこと。部屋が散らかっている、とか、テレビの音が大きい、とか、そんな小さなことでも機嫌を損ねてしまいます。
家族はいつも「波風を立てないように」と言葉を選び、父を怒らせないように静かに過ごすのが当たり前になっていました。
孫だけは特別
そんな父にも、頭が上がらない存在がいました。それは孫、つまり私の息子です。
初孫の誕生から、父はすっかりおじいちゃんモード。
甘やかし放題で、息子が遊びに来る日は、まるで別人のように優しくなります。「怒鳴る父」と「孫にデレデレのじいちゃん」、その落差に家族は驚いていました。
3歳児のまっすぐな訴え
ある日、父がまたイライラして怒鳴り出しました。
理由は覚えていませんが、空気は一気にピリピリ。
その時、その場にいた3歳の息子が、目に涙をため、震えながらも精一杯の声で言いました。
「じいちゃんが怒るとこわいぞー!」
その声は、泣き出す寸前なのにしっかり届く、真剣そのものの訴えでした。部屋の空気が一瞬で変わり、父は驚いたように息子を見つめました。
最強のクッション役
次の瞬間、父はふっと表情をゆるめ、「ごめんな」と素直に謝りました。
家族がどれだけ遠回しに注意しても変わらなかった父が、たったひと言で態度を改めたのです。
孫の純粋でまっすぐな気持ちが、父の心に刺さったようです。
それ以来、父は声を荒げそうになると、息子の「こわいぞー!」が頭をよぎるのか、少し抑えるようになった気がします。家族にとって、息子が最高のクッション役になってくれました。
【体験者:50代、会社員 回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。