20年ぶりの同窓会
高校を卒業して20年。
以前から話題に出ていた同窓会の開催が本格的に動き出し、幹事を引き受けてくれたのは、クラスメイトのA子とB子でした。
実家を離れている人も多い中、連絡網を整え、出欠確認をするだけでも相当な労力だったと思います。みんな本当に感謝していました。
「旨味」という言葉に絶句
そんなある日、A子とB子に会ったときのこと。
開口一番、A子はこう言ったのです。
「いや〜、そりゃ旨味がないとやらないよ」
旨味? 一瞬、聞き間違いかと思いました。するとA子は続けて、
「うちの店を会場にしようと思ってさ」と。
幹事の提案で進む、会場と料理の意外な計画
実はA子の夫は居酒屋を経営しており、その料理を同窓会に提供したいと言うのです。
でも今回の同窓会は学年規模で150人超。とても居酒屋で収まる人数ではありません。
そこでA子は、公民館を借りて、そこに居酒屋の料理をケータリングするというプランを提案してきました。
「費用はかかっても、ホテルとか宴会場のほうが良くない?」と私が言うと、A子は笑って言いました。
「いやいや、うちの店でやるために幹事に手を挙げたんだから!」
その言葉に、私は返事をすることができませんでした。
当日、会場で見えた戸惑い
そして迎えた当日。会場は近所の公民館。
紙コップでビールを注ぎ、冷めきった揚げ物や焼き鳥を全員がつまんでいました。
久々に会った同級生との会話は楽しかったのですが、
「もっと他に場所なかったの?」
「ホテルでやると思ってた」
「先生も来てくれたのに」
と、不満の声がちらほら聞こえてきたのです。
誰のための何の会か
幹事を務めてくれたA子とB子の労力には感謝しています。
そしてもちろん、公民館がダメなわけではありません。でも、せっかくの同窓会で「自分の店の売上を最優先にする」という姿勢が透けて見えたことで、楽しみにしていた同窓会がどこか味気ないものになってしまったのでした。
今回の同窓会は、必ずしも全員が満足する形ではなかったけれど、それでも久々に再会できた喜びは大きかったです。けれど、人を集めるときほど、「誰のための会なのか」を忘れちゃいけない、そう痛感した出来事となりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ITNコラムニスト:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。