母の強い違和感
「その人はやめなさい。絶対にダメ」
母の反対に、智子さんは耳を疑いました。
30代になり、友人は次々に結婚。
「私も早く……」と焦りが募るなかで出会ったのが彼でした。
「この人を逃したら、次はないかも」
そんな不安もあって結婚を望んだのです。
けれど母は、彼が挨拶に来た時の態度を見て「信用できない」と断言。
見えてきた素顔
しかし智子さんは結婚への焦りもあり「細かいことを気にしすぎ」と反発。
母の心配をよそに、結婚を強行しました。
最初は新婚生活に夢を見て
「きっと大丈夫」と思い込んでいました。
けれど徐々に、夫の本性が顔を出します。
給料のほとんどをFXや仮想通貨に注ぎ込み、趣味のバイクやゴルフにも惜しみなく散財。
まさに母が懸念していた姿そのものでした。
止まらない散財と不安
子どもが生まれても、夫は家計を顧みませんでした。
「投資で大儲けするから大丈夫、大丈夫」
その言葉を繰り返し、生活費の話になると耳を貸さないのです。
智子さんは働きながら必死に家計を支えました。
けれどもお金は、夫の趣味や投資に吸い込まれていくばかり。
心細さと虚しさが積み重なり、やがて智子さんは離婚を決意しました。
離婚届にサインをしながら、母から言われた言葉を思い出していたのです。
母の洞察力に脱帽
実家に戻ると、母は
「お帰り、お疲れさま。もうすぐゴハンだよ!」とだけ言い、あの頃と変わらずキッチンで微笑んでくれました。
胸に広がるあたたかさに、涙がこぼれそうになりました。
「私の人生、上手くいかないな……」
智子さんは、結婚を決める頃の思い出とともに、離婚届を書いていた時に思い出したことを尋ねてみました。
「ねえ、ママ。どうして昔、あの人をやめたほうがいいって分かったの?」
母は静かに答えました。
「責任感のない男は、言葉と態度に全部出るのよ。『大丈夫大丈夫』って軽く言う人ほど、いざという時に頼りにならないの」
「『どうも』だけで挨拶を済ませる人は、相手に敬意がない証拠」
母の人を見る目の確かさに、智子さんは改めて脱帽したのでした。
長年の人生経験から培われた母の洞察力。
もっと早く素直に耳を傾けていればと、今になって思うそうです。
【体験者:30代・女性/会社員、回答時期:2022年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。