“気まずさ”しかなかった車内で、片言の日本語がもたらした“優しさ”。
その瞬間、乗客たちの心にどんな変化が起こったのでしょうか?
今回は筆者の友人から聞いた、心温まるエピソードをご紹介します。
混雑するバス
観光地へ向かう路線バスは、午前中からとても混雑していました。
私はそのとき足を捻挫しており、病院に向かう途中。
偶然最後列に座れてホッとしていたのも束の間、次のバス停で杖をついた高齢の女性が乗ってきたのです。
どう見ても足が不自由そうで歩くのもやっと、という感じでしたが、座っている乗客は誰も席を譲ろうとしません。
優先席には明らかに元気そうな若者も座っていましたが、スマホに夢中の人、寝たふりをする人。
なんだか空気が冷たく感じて、私が席を譲ろうか迷っていると……。
外国人観光客
バスの中央あたりに座っていた、外国人旅行者らしき若い男性がサッと立ち、にこやかに
「ドウゾ、スワッテイイヨ」
と女性に声をかけたのです。
流暢ではないものの、はっきりと優しさのこもった日本語でした。
その温かい言葉に高齢女性も、
「ありがとうね~」
とほっとした笑顔で着席できました。
優しさの連鎖
さらに彼は、女性の荷物を棚に乗せてあげ、
「オモイ?」
「ダイジョウブ?」
と降りるまで気遣っていました。
その紳士な行動に気まずさを覚えたのか、優先席に座っていた2人の若者も席を立ち、別の高齢者に席を譲っていたのです。
その一部始終を見ていて、なんだかほっこり温かい気持ちになりました。
思いやり
外国人観光客の温かな行動に気づかされたのは、優しさに国籍も言葉も関係ないということ。
ただ静かに、自然体で誰かを思いやるその行動は、バスのなかの空気さえ変えてしまったのです。
思いやりの気持ちを持つことの大切さを教えてくれた旅行者の彼に、心のなかで『ありがとう』と感謝した出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。