この夏、我が家の小学一年生の息子が、初めて“命を育てる”体験をしました。きっかけは、田舎で出会った1匹のトカゲ。生き物にあまり興味のなかった息子が、声をかけ、餌をあげ、世話をする……。その変化に、親の私が一番驚かされた夏の記録です。

帰省中。田舎での出会い

夏休みに訪れた祖父母の家は、自然に囲まれた場所。そんなある日、「あれはなに?」と指をさした先にいたのは、庭を歩き回る小さなニホントカゲでした。
初めて見るその姿に、息子は釘付け。最初は「こわい…」と言っていたのに、気づけば「捕まえて飼ってみたい」と目を輝かせていました。

捕まえるのは、かなり大変でしたが、やっとの思いで捕まえたしっぽの青い1匹のトカゲの子ども。その日から、息子は少しずつ変わり始めたのです。

初めての飼育生活

小さな虫かごにそのトカゲを迎え、飼い始めました。名前をつけて、朝起きると「おはよう」と声をかけ、出かける前に「いってくるね」と話しかける息子の姿には驚かされました。

生き物の世話は、想像より手がかかります。餌となる虫を探しに行くのも少し気が重い……。それでも息子は、一度も「やって」と言わず、自分の手で世話を続けました。

小さな命が教えてくれたこと

これまで、テレビやゲームばかりに夢中だった息子。正直、「生き物の世話なんて無理だろうな」と思っていました。でも、たった1匹のトカゲとの出合いが、彼の中に眠っていたやさしさや責任感を目覚めさせたようでした。

図書館でトカゲの本を借りてきて、飼育に必要な環境を調べたり、どんな言葉をかけたら安心してくれるか、どんなタイミングで餌をあげると食べるかなど一所懸命に試行錯誤していました。

「きっかけ」は、ふとした偶然

今年の夏、我が家にやってきたのは、たった一匹の小さな生き物。
息子にとっては、大切な友達であり、人生で初めての「守る」存在になったようです。
きっかけは大きなことでなくてもいい。そこに”心を動かす体験”があれば、子どもはグーンと成長していくのだな、と感じた夏でした。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。