町内会の清掃
Kさんは旦那さんと2人の子どもと、一軒家を購入して新しい住宅街に引っ越したばかりでした。
お隣や裏など、自宅に接しているお宅には挨拶に行ったものの、まだまだ顔を知らないご近所さんがたくさんいます。
そこで町内会で住宅街のゴミ拾いをするという行事があったのでKさんは「ご近所さんと親しくなるために」と参加することにしました。
「よし、がんばるぞ!」
当日は朝から天気が良く、とても暑い日だったのでKさんは凍らせたお茶の入ったペットボトルを持参し、濡れないようにペットボトルカバーに入れて持って行きました。
「ねえ、あの人ちょっと……」
作業中にちょくちょく水分補給をしていると、近くにいたご近所さんがそれを見て不審な顔。そしてそのご近所さんを中心に数人が固まり、Kさんの方を見てひそひそ話をしていました。
あらぬ疑いをかけられ、そして見えたもの
まだ挨拶をしていないからかな、と思ったKさんはご近所さんたちに駆け寄りました。
「今度引っ越してきたKです」
「あら、よろしくお願いします」
ご近所さんたちはそう言ってくれたものの、どこか表情が固いまま。休憩時間になっても誰も話しかけてはくれません。
「私、何か悪いことをしたかな……」とKさんが思いながら持参したお茶を飲んでいると、突然町内会長さんから声をかけられました。
「失礼ですが、何を飲んでいるんですか?」
Kさんはどうしてそんなことを聞かれるのかな、と思いつつもペットボトルカバーからお茶を出して見せました。
「凍らせたお茶ですよ、今日暑いので」
Kさんの答えに、町内会長さんはほっとした顔で言いました。
「すみません! ペットボトルを隠してるから、お酒を飲んでいるんじゃないかと言う人がいて」
「ええ!? お酒じゃないですよ!」
日焼けしやすいKさんの顔が赤くなっていたこともあり、どうやらお酒を飲んで酔っぱらいながら清掃作業をしていると思われたようでした。
「そのせいだったのか」
ご近所さんが不審な顔をしていたのはそのせいだったのかと思い、Kさんは納得。
この一件をきっかけに、Kさんは自分から積極的にご近所さんに話しかけ、顔と名前を覚えてもらう努力をするようになりました。
家を買ってその地域で長く住むことになるわけですし、今回の件を笑い話にできる日が来ることを願って、これから少しずつ、この地域に馴染んでいこうと決意したのでした。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。