毎日子どもたちに寄り添い、保護者との連絡帳も丁寧に続けていたAさん。
ところが、ある保護者から連絡帳での「詰問」が続き、やがて心は限界に。
そんなAさんを救ったのは――?
恐怖の連絡帳!?
私は、幼稚園の年少クラスの担任をしています。
可愛く、パワフルな子どもたちに囲まれ、慌ただしくもやりがいを感じる毎日。
保護者の方々とは、連絡帳を通じてコミュニケーションを取っていて、子どもたちの園での様子を伝えたり、家庭でのことを聞いたりしています。
連絡帳で得られる気づきも多くあるため、どんなに忙しくても、丁寧なやりとりを心がけてきましたし、なにより、自分の癒しにもなっていました。
まさかこの連絡帳が、私にとって「恐怖のノート」になるだなんて――。
保護者からの「詰問」に、ストレス
きっかけは、Cさんという保護者からのこんな一文でした。
「お迎えのとき、うちの子が泣いていましたが、先生の対応がよくなかったのでは?」
ドキッとするような書き方に、やや戸惑いましたが、たしかにもう少し気を付けて見てあげればよかったのかもしれません。
その日のお返事として、お子さんの園での様子を交えながら、軽くお詫びをしました。
しかし、それを皮切りに、Cさんからの連絡帳の内容はどんどん激化していったのです。
「服が汚れていました。一体どういう保育をしているんですか?」
「なぜ、うちの子だけお昼寝していないんですか?」
「連絡事項」ではなく、まるで「詰問」。
そんな内容の鋭い言葉が、毎日届くようになったのです。
子どもたちには、ひとりひとり個性がありますし、保育中の出来事にはそれぞれ理由があります。
私は誠実かつ丁寧に状況を説明し、ひとつひとつ返事を書きました。
それでも、Cさんは納得がいかないよう。
彼女の文面は日に日に攻撃的になっていき、次第に私は、毎日の連絡帳を見ることに強い恐怖とストレスを覚えるようになってしまいました。
園長先生に打ち明け、号泣――
いざ、Cさんからの連絡帳を開こうとすると、指が震え、動悸がするようになった私は、朝の会の準備に手がつかなくなる日も。
気分が沈み、元気いっぱいの子どもたちにうまく応えられなくなったりと、明らかに仕事にも影響が出てしまいました。
頑張って笑顔を作ろうとするも、もう心は限界だったと思います。
そんなある日、園長先生が声をかけてくれました。
「最近ちょっと元気ないわね、大丈夫?」
その一言に、張りつめていた糸がぷつんと切れて――。
私は号泣しながら、ことの経緯を園長先生に打ち明けました。
「話してくれてありがとう。これは先生がひとりで抱える問題じゃないわ」
その後
それからすぐに、園長先生はCさんと面談してくださいました。
結果、今後のCさんとの連絡帳でのやりとりは、園長先生を通じて行うことに。
文章でのコミュニケーションに不安がある場合は、必要に応じて電話か面談も併用するとのことでした。
Cさんも、大切なお子さんを他人に預けているわけですから、神経質になっていたのかもしれません。
園長先生の対応のおかげで、「詰問」は徐々になくなっていき、私の心にもようやく平穏が戻りました。
また穏やかな気持ちで保育に向き合えるようになり、ほっとしています。
あのとき、園長先生に相談することができなかったら、もしかすると退職まで考えていたかもしれません。
どんなに好きな仕事でも、ひとりで抱えきれないことはあります。
誰かに助けてもらうことで、やっと踏ん張れることも。
園長先生には、感謝の想いでいっぱいです。
私自身も、同僚や、子どもたちの小さな変化に気づけるように、もっと成長しなければと感じた出来事でした。
今日もいっぱいの笑顔で、子どもたちひとりひとりの心に寄り添っていきたいと思います。
【体験者:30代女性・幼稚園教諭、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。