そんな小さな夢を語るたび、息子夫婦との距離が少しずつズレていたという女性。
ある日、息子の一言で気づいた“本当の思いやり”とは?
今回は筆者の知人から聞いた、理想と現実の間で揺れたエピソードをご紹介します。
孫と連弾したい夢
私は若いころからピアノを弾くことが大好きでした。
学生時代に近所のピアノ教室で習い始めたことをきっかけに、結婚・子育てを経ても、唯一手放さなかった趣味なのです。
今も私の心を潤してくれる趣味ですが、息子が結婚して孫が生まれてからというものの、新たな夢を抱くようになりました。
「この子といつか連弾できたら素敵ね」
「セッションできたら楽しいわ♪」
そんな夢を息子夫婦に何度も語ってきたのです。
息子からの苦言
そのうち、ピアノを習うことのメリットを息子夫婦にも知ってもらおうと助言するように。
「絶対音感がつくのは早いほうがいいわよ」
「リズム感もついてきっと孫のためになるわ」
100%悪気のない善意から伝えていたことだったのですが……。
ある日、息子から、
「母さん、それが俺たちにとってはプレッシャーになっているから」
と注意されたのです。
どうやら息子夫婦にとっては“ピアノを習わせなくてはいけない雰囲気”に息苦しさを感じていたようでした。
反省
そう指摘されて、初めて自分の過ちに気づいた私。
私は“夢”という言葉で、無意識に期待を押しつけてしまっていたのです。
私自身、親の期待に応えられるようにと自分の想いとは裏腹に努力した経験もあり、その期待の重さ・辛さを知っているはずなのに……。
それからは、ただ“孫が笑顔でいてくれること”が何よりの願いになりました。
気づき
今では、孫がたまにピアノの前で遊んでくれるだけで十分嬉しいと思えるように。
私が弾くピアノの音色を楽しんでくれている姿を見るだけで、心はとても満たされると知りました。
独りよがりな夢は手放して孫の成長を温かく見守ろうとすることで、息子夫婦とも良好な関係が築けると気づいた出来事でした。
【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。