ある出来事をきっかけに「一緒に住もう」と提案したところ、思いがけず断られ、その理由に戸惑いました。
後に知ったのは、過去の経験からくる、私や家族を思っての優しい配慮でした。
その気持ちに触れたことで、親子の距離感や思いやりについて改めて考えさせられました。
今では、お互いに無理のない形で心地よい関係を築いています。
「同居はしないよ」と言い続けた母の本音
結婚してからずっと、母は「同居はしないよ。だって自由にしたいからね」と言っていました。私は、母は自分の時間を大切にしたいだけなんだと軽く受け止めていたのです。元気なうちはそれで何の問題もありませんでした。
病気をきっかけに、同居を提案
けれどある日、母が病気になり、体調が不安定になってきました。私は「そろそろ一緒に住んだほうが安心だ」と思い、同居を提案。夫も息子も快く賛成してくれて、私は母もきっと喜んでくれるだろうと思っていました。
しかし、母の返事は意外なものでした。
「同居はしないよ」
以前と変わらぬその返答に、なぜそこまで頑ななのか、不思議に思っていました。
母の本音を知った瞬間
そんな中、母が親戚に相談していたことを後から知る機会がありました。実は、母はかつて父の両親との同居経験があり、そのときに嫁姑問題でずいぶん苦労したというのです。そのことを、母は私には一切語らず、明るく振る舞っていました。
母は、私がその経験を知らないからこそ、自分と同じような苦労をさせたくなかった。私の夫にも同じようなプレッシャーをかけたくなかった。そんな母の配慮に、胸がいっぱいになりました。
程よい距離感がくれた安心
私は夫と相談し、母の気持ちを尊重して実家のすぐ近くへ引っ越すことを決意。今では歩いてすぐの距離に住み、お互いに無理なく助け合える関係が築けています。
親の心に触れて見えたもの
「自由でいたい」の裏側には、私を守ろうとする深い思いやりがあった。親の本音というのは、時に言葉にされなくても、その行動に込められているのだと気づかされました。
この経験を通して、私自身も親として、どんな思いで子どもを見守っていくかを考え直すきっかけになりました。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。