夢を反対された高校時代
ミサキさんは高校生の頃、ダンスインストラクターを夢見ていました。
毎日のように練習に励み、インストラクターとなった後、ゆくゆくは将来の舞台を思い描いていたのです。
しかし母は真剣な表情で告げました。
「ダンスなんて趣味でやるもの。きちんと勉強して大学に行きなさい」
ミサキさんは必死に訴えます。
「なんでわかってくれないの!」
結局、母に認めてもらえなかったということで決意がゆらいでしまい、ミサキさんは進学を選ぶことにしたのです。
大学ではダンスサークルに入り、夢を完全には手放せずにいたそうです。
社会人になっても諦められない思い
社会人になり安定した仕事に就いても、ダンスインストラクターになりたい想いは消えず、仕事帰りにレッスンへ。
楽しさを感じる一方で、インストラクターの仕事量の多さなどが想像以上だということを知り、驚きました。
「趣味として楽しむのと、仕事にするのって、全然違うんだな」
その差を、身をもって感じていきました。
現実を知って気づいた母の愛
休日のレッスン帰り、母と食事をしました。
学生時代は夢を巡って何度もぶつかり、たくさん喧嘩もしてきた。
でも今は、こうして笑い合える時間が愛おしい。
好きなことも、仕事も、どちらも充実している。
その幸せを噛みしめながら、ふと気づきました。
プロの世界で輝く人たちもいる。
でも、自分には違う道が合っていた。
安定した収入があるからこそ、心からダンスを楽しめる。
思わず口にしました。
「大学に行けって言ってくれて、ありがとう」
母は少し照れて笑い、こう言いました。
「なによ、改まって」
そして、真剣な表情に変わります。
「ママもね、ダンスが大好きなのよ。ダンスの世界って、やるのも観るのも楽しい素敵な世界でしょう。でもその華やかな世界で仕事をしていくには、好きだけじゃない、それなりの覚悟が必要だと思ったの。だからあえて、厳しい言葉を言ったのよ」
好きなことは好きなままで
あの頃は反発ばかりだったけれど、母の思いを知り、胸が熱くなりました。
ミサキさんが自分の決意に覚悟を決められるよう、時に厳しく見守ってくれていたのです。
その結果、今彼女が自分らしく好きなダンスを思いきり楽しめるのも、あの時の母の言葉があったからこそだと言います。
「“好き”との向き合い方は人それぞれ」
「どんな形でも、好きなことは、好きなままで」
親の反対には、時として深い愛情が込められているもの。
子どもの幸せを一番に考えてくれているからこそなのかもしれませんね。
【体験者:30代・女性/主婦、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。