夫の変化に気付いてしまい──
ここ数年、以前と比べて夫の残業が目に見えて増えていました。
それだけではなく、週末の楽しみだったゴルフも控え、会社の飲み会も断り続ける日々。
自分のお小遣いもかなり切り詰めている様子です。
私の頭には黒い疑いが浮かびました。
もしかして、どこかで借金でも?
そうでなければ、誰かに貢いでいるとか……?!
考えれば考えるほど悪い想像ばかりが膨らみ、最近では夫の顔をまともに見られなくなっていました。
引き出しから現れた、衝撃の事実
ある日、夫の書斎を掃除していると、いつもは鍵がかかっているはずの机の引き出しが、ほんの少し開いていることに気付きました。
「見てはいけない……」そう思いながらも、私の手は吸い寄せられるように引き出しへ。
中にあったのは、見慣れない銀行の封筒。
震える手で開くと、中から出てきたのは夫名義の通帳でした。
ページを開いた瞬間、血の気が引きました。
私の知らない入金履歴がずらりと並び、残高は400万円を超えていたのです。
きっかけは、私の【何気ない一言】だった
我が家は私が家計の管理を任されているのですが、こんな貯金の存在は全く聞かされていませんでした。
結婚前のものならまだ分かりますが、貯金は結婚後の日付から始まっています。
「どうして言ってくれなかったんだろう。何のためのお金なの……?」
モヤモヤした気持ちのまま夫の帰りを待ち、私はその通帳を突きつけました。
夫は一瞬ひどく驚いた顔をしましたが、やがて観念したように「ごめん、黙ってて」と静かに口を開きました。
それは、5年前のこと。
当時、私はテレビを見ながら「いつか世界一周旅行とかしてみたいね」とポツリと漏らしたそうです。
夫は、それをずっと覚えていて、いつか叶えるために1人でコツコツとお金を貯めてくれていたのだそう。
これからは同じ夢を追いかけたい
口下手で、気の利いた言葉なんて全然言えない不器用な夫が、私の何気ない夢を5年もかけて育ててくれていた……。
一瞬でも疑ってしまったことを心から恥じ、私は「これからは私も一緒に貯金するから、無理な残業はしないで。趣味もちゃんと楽しんでね」と申し出ました。
あの通帳は、ただのお金ではなく、5年間積み重ねた愛情の証だったのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。