良かれと思って渡した写真
私は昔から、趣味で一眼レフカメラを愛用しています。
年に1度の小学校の運動会は、自前のカメラを活かして我が子の一生懸命な姿を追いかけるのが恒例。
そんな時、必ず声をかけてくるのが、近所に住むママ友のCさんでした。
「わあ、プロみたい! すごいね!」
最初はそんな言葉が嬉しくて、Cさんのお子さんが写った写真も何枚かプリントして渡していました。
もちろん代金や見返りは求めず、純粋な厚意でしていたことです。
「2000枚お願い」厚かましすぎる要求に閉口……
しかし、Cさんの要求は年々エスカレートしていきました。
「相変わらずすごいカメラね! うちの子だけじゃなくて、お友達が写ってるのも全部欲しいから、数枚と言わず2000枚くらいお願い♡」
悪びれもなく言われた時は、さすがに耳を疑いました。
運動会の翌日には「写真まだ? 待ってるんだけど」と催促のメッセージが。
膨大な写真の中からCさんのお子さんを探し、編集するこちらの労力など、お構いなし。
私の厚意は、いつの間にかCさんにとって「当たり前」のサービスになってしまっていたようです。
決定的な一言
そして、決定的な出来事が起こります。
Cさんが他のママ友に
「あの人に頼めば、学校指定の写真屋から有料で買わなくて済むから超お得よ~」
と吹聴しているのを、偶然耳にしてしまったのです。
頭が真っ白になりました。
私は、ただの「節約術」として利用されていただけだったんだ……。
悲しさと怒りで胸がいっぱいになり、私の中で何かがプツンと、静かに切れました。
写真に仕掛けた【抵抗の証】
今年の運動会後、いつもの催促に、私は笑顔で数百枚のデータが入ったURLを送りました。
数分後、Cさんから「何これ! 全部の写真にあなたの名前が透かし文字で入ってるじゃない!」と怒りの電話が。
私は淡々と答えました。
「ああ、それウォーターマークっていうの。欲しい写真の番号を教えてくれれば、有料でマークを外すよ。指定業者さんよりかなりお安くしておくから」
Cさんは「お金取る気!? 信じられない!」と激昂し、一方的に電話を切りました。
彼女にとっては、タダでなければ意味がなかったのでしょう。
こうして、彼女の節約術は終わりを告げ、私の心はようやくスッと晴れたのでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。