母のやさしさ、義実家への贈り物
ある夏の日、実家の母が「お義母さんに地元の桃を送っておいたよ」と、私に知らせてきました。
あえて完熟の状態を待ってから発送するという「完熟桃」で、甘くて香りも豊か。
見た目より味重視の母らしく「ちょっと熟れすぎてるけど、味は間違いないよ」と嬉しそうに言っていました。私も「それは喜ばれるはず!」と、なんだか鼻高々。
義母からの一本の電話
ところが数日後、義母から私の実家に電話があったそうで。
「桃、届いたんだけど……ちょっと傷んでてね。うちはいいけど、他に贈るなら気をつけた方がいいわよ」と、まるで“ありがた迷惑”だったかのような口調。
母は恐縮して「すみません」と平謝り。電話を切った後、「なんだか申し訳なかったわね」と少し落ち込んだ様子でした。
感謝の一言があれば……
私は「わざわざ実家にまで電話しなくても……」と正直モヤモヤ。
せっかくの気持ちも、義母の一言で台無しになった気がして残念でした。
もちろん、少し痛んでたのかもしれません。でも、「甘かったわよ、ありがとうね」とまず感謝の一言があれば、印象は全然違ったはず。
母のやさしさに水を差されたようで、心に引っかかりました。
感謝の気持ち
今回のことで学んだのは、「言葉は贈り物にもなるし、トゲにもなる」ということ。
たとえ伝える内容が同じでも、言い方ひとつで受け取る側の気持ちは大きく変わります。
母の気持ちを考えると切なかったけれど、自分は誰かの善意に対して、感謝の気持ちをまず伝えられる人でいたい──そんなふうに思えた出来事でした。
【体験者:50代・筆者 回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒヤリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大下ユウ
歯科衛生士として長年活躍後、一般事務、そして子育てを経て再び歯科衛生士に復帰。その後、自身の経験を活かし、対人関係の仕事とは真逆の在宅ワークであるWebライターに挑戦。現在は、歯科・医療関係、占い、子育て、料理といった幅広いジャンルで、自身の経験や家族・友人へのヒアリングを通して、読者の心に響く記事を執筆中。