どうしました?
「こんにちは、どうしましたか?」
テラスで一息ついていたタエコさんの庭に、近所の女性がずかずかと入ってきました。
「ご近所だもの、あたしたち家族同然よね」
そう言うやいなや、大葉やタイム、ローズマリーをむしり取っていきます。
「これがあるとお料理がおいしくなるのよ」
笑顔で言いながら、悪びれる気配はゼロ。
最初は違和感を覚えながらも「少しなら……」と見過ごしていました。
エスカレートする要求
その女性の行為は、日に日にエスカレートしていきました。
最初は葉を数枚摘むだけだったのが、そのうち根っこまで引き抜き、まだ成長途中の芽まで持ち去ったのです。
「今度はバジルも植えて」
「イタリアンパセリもお願い」
厚かましいリクエストまで飛び出す始末。
ある日には、別のご近所さんを連れてやってきました。
「ちょっと、勝手に悪いんじゃないの?」と同行者が止めても、
本人は「そんなのいいのよ、気にしないのよ〜」と軽く流していました。
タエコさんの中の違和感は、ついに苛立ちへと変わっていきました。
我慢の限界
ついにタエコさんは我慢の限界を迎えました。
「勝手に取らないでください。時間をかけて育てているんです」
すると女性は目を丸くし
「ケチね! 植物なんてまた生えるでしょ」
完全な逆ギレでした。
タエコさんは呆れ果て、
庭に小さな柵を設置。
ところが今度は
「あの人はケチよ」
「植物くらいで心が狭い」
と、近所中に悪口を言いふらされました。
大葉漬
数週間後、別の近所の人がタエコさんに声をかけました。
「あなた、お庭に手間をかけて素敵ね。」
「みんな知ってるわよ……あの人勝手にむしっていって、ひどいわよね」
胸がじんわり温かくなったタエコさん。
どうやら他の住民も非常識だと感じていたようです。
それを知ったのか、ハーブをむしり取っていっていた女性がある日
「あの、よかったら食べて」
と大葉漬をタエコさんに手渡し、足早に去っていきました。
自分の庭を守り、理解者もいた。
毅然とした態度の大切さを実感した出来事でした。
【体験者:50代・女性/デザイナー、回答時期 2020年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。