朝まったく起きられなくなった夫に、「怠けているだけ」と責めていた妻。
しかしあるひと言をきっかけに、事態の深刻さに気づきます。
静かに進行していた“心の異変”とはいったい何か──。
今回は筆者の知人から聞いた、夫婦のエピソードをご紹介します。

起きられない夫

ある頃から、夫が朝まったく起きられなくなったときがありました。

以前は出勤前に5歳の娘とじゃれあう余裕もあったのですが、その当時は目覚ましを何度止めてもベッドから出てこないのです。

休日も昼過ぎまで寝ていて、起きた後も何だかぼんやり夢うつつな状態。

最初は『疲れているのかも』と思っていたのですが、夫は日に日に口数が減っていきました。

夕食のときもスマホをジーッと見つめていたりして、会話はほとんどありません。

そんな態度にイライラした私は、
「また寝坊したの?」
「もう、ちゃんとしてよ!」
と何度も責めてしまっていました。

夫の言葉

そんなある夜、夫がぽつりと、
「もう会社には行きたくない」
と言ってきたのです。

そのひと言で、ようやく『これは普通じゃないかも』『夫の身に何か起きているのかも』と危機感を覚えた私。

翌日、半ば強引に病院へ連れて行きました。

色々検査を終え、主治医とも話した診断結果は、“軽度のうつ病”!

私はもちろん本人も驚いた様子で、
「まさか自分が!?」
と信じられない表情を浮かべていました。

反省

まさか、朝起きられないのが“心の悲鳴”だなんて、考えもしなかった私。

それから夫は通院と服薬を始め、私は生活面のサポートを心がけプレッシャーを与えないように。

今では少しずつ朝も時間通りに起きられるようになり、笑顔が戻ってきています。

快復傾向にある夫を見てほっとする一方で、これまで夫の変化に気づくのが遅かったことを、何度も悔やみました……。

心の健康

でも同時に、今だからこそ“心の健康”について夫婦で話し合えるようになった私たち。

“心の疲れ”は見た目だけではなかなか分からないこともあります。

家族だからこそ、早く気づいて寄り添えるようにしていきたいと痛感した出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。